第18回東京国際映画祭千秋楽前日に、アカデミー賞に輝いた「戦場のピアニスト」を手がけた巨匠ロマン・ポランスキー監督の次回作、「オリバー・ツイスト」の公開が飛び込んできた!その記者会見が渋谷Bunkamuraで行われた。会場には、見事主役のオリバー・ツイストを射止めた若干12歳のバーニー・クラークと、「戦場のピアニスト」でも監督と組んでいるロベール・ベンムッサプロデューサーが現れた。12歳にもかかわらず、ポランスキー監督のおめがねにかなったバーニー君は、たくさんの報道陣にたじろくこともなく、大人びた雰囲気を醸し出していた。「僕にとっては本当に素晴らしい経験になりました。俳優でもあるポランスキー監督は偉大な人で、僕の演技に対してなにか助言するということはあまりなくて、実際に演じて見せてくれました。それにたくさんジョークを飛ばして、僕をリラックスさせてくれたりもしたんですよ(笑)」と、当時の撮影所の雰囲気を懐かしむような表情で語ってくれた。そんなバーニーを、我が子のように見つめるベンムッサプロデューサーは、大成功を収めた「戦場のピアニスト」に続くポランスキー作品として、「オリバー・ツイスト」を選んだ経緯と、どのように制作の過程をたどったのか、ポランスキー監督の意図を尊重してフランス語で話してくれた。「『戦場・・・』に続く、人々に感動してもらえる作品のテーマとして、若い男が人生の苦難を乗り越える物語が人々の心を打つだろう、という結論に至ったんです。「オリバー・ツイスト」は、この作品の前にも2度映画化されていて、ミュージカルとしても親しまれているということはもちろん監督も知っていました。でも、彼は映画作家の立場としてそれらの中からインスピレーションをえるということはなく、ディケンズの原作から想像を脹らませ、さらに彼の若い頃の実体験を盛り込んで製作に至りました。」と話した。

舞台は、19世紀のロンドン。まだ発展途上国であったイギリスは、急成長を遂げるため、たくさんの孤児の労働力を狩り出していた。そんな時代の歯車に巻き込まれていく少年オリバーの「生きていく」姿勢には、誰しもが心打たれるものがある。たとえ時代や人種が異なっても、今現在の発展途上国の子供たちの姿が投影され、実際の問題への視点の変換を要求されるストーリーとなっている。主役のバーニーも「現実の問題を考えさせられました。」とコメントした。時代の問題に鋭く切り込むポランスキー監督の視点には感嘆の意を表したい。

(林 奏子)

□作品紹介
『オリバーツイスト 』

■東京国際映画祭
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