05年度カンヌ国際映画祭 最優秀男優賞・最優秀脚本賞受賞。初の監督作品とは思えない映像美と脚本の完成度、そして名優トミー・リー・ジョーンズと新進気鋭の若手俳優バリー・ペッパーの演技のコラボレーションによって「メルキアデス・エストラーダ3度の埋葬」は誕生した。「バリーは、約135人の俳優の候補から選ばれた素晴らしい役者だよ。彼は、この役に必要な肉体的・精神的強さと、知性を持ち合わせているんだ。」と、監督はコメントしました。
監督となった経緯を教えてください。という質問に,
「ちょっと待ってくれ、この紙に書いてあるんだ。」と、さっきポケットから出してくしゃくしゃに丸めたスクリプトを広げながら話し始めた監督に、会場は大笑い。なんとも和やかなムードの中、会見がスタートしました。「脚本を書いたギジェルモ・アリアガとは、狩り仲間なんだ。そして共同プロデューサーとなるフィッツ(マイケル・フィッツジェラルド)との3人で狩りをする機会があってね。それで、『今、ここにこんなに素晴らしい才能が集結しているのに、なにかしないでいるのはもったいない!』という話になったんだ。そして僕が監督を務めることになったのさ。」と話してくれました。

「メルキアデス・エストラーダ3度の埋葬」はテキサスの牧場主、国境警備員、不法入国者の人生が、メキシコとアメリカの国境を越えて複雑に絡みあうストーリーで、メキシコ人農夫メルキアデス(フリオ・セサール・セディージョ)がある日突然、テキサスの砂漠で銃弾に撃たれることからすべてが始まる。彼の生前の「俺が死んだら、故郷へ連れて行ってくれ。」という言葉を胸に、メルキアデスの友人の農夫ピート・パーキンズ(トミー・リー・ジョーンズ)は彼を誤射したマイク・ノートン(バリー・ペッパー)にメルキアデスを担がせ、メルキアデスの故郷ヒメネスへと向かう。死んだ親友との約束を守った男を待っていたものとは…??

「この話を通じて、いまだBORDER(国境線)に残る問題をみなさんに感じてほしい。」と、優しい監督の目が、その時は怖いほど真剣でした。でもすぐいつもの優しい瞳に戻りました。なぜなら、最後に一緒に来日した奥さんとのフォトセッションが行われたからです!!奥さんとはずっと手をつなぎながら本当にお幸せそうでした。そんな愛に溢れた魅力的なジョーンズ監督の初監督作品「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」は、シリアスなストーリーの中にもドラマティックでサスペンスにあふれ、現代的テーマを扱いながらも同時に懐かしさも漂わせているという、監督に匹敵する魅力を備えた作品となっています。
ぜひ、劇場でご鑑賞してみては?

(ハヤシ カナコ)

2006年春 恵比寿ガーデンシネマほかにて全国順次ロードショー

◆東京国際映画祭
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