過去を振り返る二人。付き合い始めた頃から結婚生活の事。
互いを撮ることで、夫婦の間に存在した、心と体の問題があらわになる。そして二人の心がすれ違い、重ならない様をカメラは映し出す。

10月8日(土)公開日初日に、私的ドキュメンタリー映画「サオヤの月」の監督舞台挨拶が行われた。
監督は、数々のピンク映画や、石井聰亙、斉藤久志などの作品に参加してきた藤川佳三。
助監督をやめた彼は、物干し竿を売る商売を始める。そして、自主映画『STILL LIFE』を製作後、協議離婚の末に妻・幸子と別れることになる。独り身になった彼は、家族の再生を図るべく、別れた妻と子供たちにカメラを向け始めた。衝動的に始めた映画作りは、妻との関係から、次第に両親との問題も浮き彫りにしてゆく・・・。
もう一度愛するものと向き合うことで、家族とは何かを考える、超私的ドキュメンタリー。

「この映画は4年前の夏から撮影1年半、編集に1年かけました。あえて、離婚した後、元妻にカメラを向けて話しをしました。普通だったらやらないことをあえてやったこと・・・。この映画を作った意味・・・ずっと考えてまして・・・。見終わった後、皆さんの率直な感想をいただきたいです。」監督は少し言葉を詰まらせながら挨拶を終えた。
この映画を作った意味、その答えを未だ模索中なのか。
いつかその答えは見つかるのだろうか。

私的なドキュメンタリーであるが、彼ら(佳三と幸子)の姿は、男女間に存在する普遍的な問題を映し出す。壊れた夫婦が、過去と対峙し互いを見つめ直す様は、誰もが抱える、身近な者に対して抱く気持ちの揺れをあらわにする。愛する想いとは?愛される感覚とは?そして、家族という単位とは?・・・相手と向き合うことで、気づかなかった自分を発見する作品でもある。

映画の中で、元妻・幸子がこう呟く。「ココロって、心臓にあると思ってたけど、ココロって、皮膚の表面にあるのかな・・・」
この映画は心の中すべてをさらけだし、赤裸々に物語る。
あなたは、見た後どう呟いているだろうか?

(ナガシマトモエ)

★10月8日(土)〜21日(金)連日夜9時より
「シネマアートン下北沢」にてレイトロードショー

□ 作品紹介
サオヤの月