現代社会の大きな問題であり、年々増え続けている少年犯罪…
巨匠・黒木和雄監督(『父と暮らせば』)を師とする日向寺太郎監督が描くのは、少年犯罪の事件をベースとし、生と死の本質をリアルに映し出した映画『誰がために』。

本日の完成披露試写会・舞台挨拶には出演者の浅野忠信さん、エリカさん、池脇千鶴さん、小池徹平さん、監督の日向寺太郎さんが登壇し、一言ずつ本作についての想いを語った。

日向寺監督:「今とても緊張しています。初めて一般の方々に観て頂くので、皆さんがどのような感想をお持ちになるのか、不安と期待でいっぱいです。本作のテーマは少年犯罪という事になっていますが、それに限らず大きな話で言えば戦争など、数々の事件には暴力が付き物です。現代ではそんな暴力がとても身近なものになってしまいました。誰にでも起こりえるものですから。そんな想いが本作の出発点となったのです。」

浅野さん:「誰にでも起こりえるものと先ほど監督は言いましたが、まったくその通りです。自分は今までこのようなテーマの作品に関わった事がなくて、今回脚本を読んだときにとても心にひっかかるものがあったのです。僕が演じた役はとても魅力的な役で、冷静でいられない役でした。完成して観たときも決して冷静に観れるものではなかったけれどラストシーンで救われた気がします。脚本を読んで泣いてしまったくらい、僕にとって思い入れのある作品になりました。これから観る皆さん、じっくり楽しんで下さい。」

エリカさん:「素晴らしい監督、そして俳優の方々と一緒にお仕事が出来た事を大変嬉しく思います。私は自分の撮影がなかった時でも現場に行って、私の夫役の浅野さんと池脇千鶴さんが仲良くならないように邪魔をしたりしちゃいました(笑)。本作は私が想像していたよりもとても深い作品になりました。」

池脇さん:「私が演じた役は、分かりやすい役ではなかったですね。同じ女性が見れば通じる部分があるかもしれませんが…。私は完成した作品を観ても答えが出ませんでした。これから観る皆さん、意見を聞かせて下さい。」

小池さん:「本作は僕にとっての初出演映画なので緊張しましたし、今もとても緊張しています。僕の役は感情を表に出さず淡々としている役だったのですが、僕はすぐ感情が表に出てしまうので難しかったですね。なのでその辺を気をつけながら一生懸命演じました。」

その後の質問で、共演者の浅野忠信さんについて聞かれた小池さんは「浅野さんはとても優しい人でした!」と笑顔で答えると「若い人に近づこうと思って…(笑)」と浅野さん。重いテーマの割りに現場はとても明るく和やかなムードだったという。
そして本日は登壇できなかったが、本作で音楽を担当した矢野顕子さんからもビデオメッセージで「シナリオを読んで私にも何かできるかもしれないと感じたので、こうしてこの作品に少しでも貢献できたのなら大変嬉しいです。」と言葉を送った。
実写映画音楽初担当となった彼女ののびやかなピアノのメロディが見事に映像とマッチし、より一層観る者の心を熱くすることは間違いないだろう。

(菅野奈緒美)

※2005年今秋、シアター・イメージフォーラムにてロードショー

◇作品紹介
『誰がために 』