ブラック・ムーヴィー史上最重要作『スウィート・スウィートバック』(’71年)の生みの親メルヴィン・ヴァン・ピープルズを記録した『バッドアス!』の特別試写会が8月25日(木)に行われた。『バッドアス!』は、メルヴィンの息子マリオ・ヴァン・ピープルズが製作・監督・脚本・主演を担当し、黒人=道化師役という偏見が根強かった時代に父親が挑んだ“ブラック・ムーヴィーの革命”を描く。また、『アリ』(’01年)、『コラテラル』(’04年)の監督マイケル・マンが、マリオの熱意に打たれ、製作総指揮に参加している。
 試写会には、来日したメルヴィン・ヴァン・ピープルズとマリオ・ヴァン・ピープルズの親子が登場。会場からの質問に答えていった。
 
Q:(若い世代に)何を伝えたかったか?
A:マリオ・ヴァン・ピープルズ(以下マリオ)—例えば視力が落ちていくなど色々なことが起きた(父という)1人の人間の世界を表現したかった。『バッドアス!』は白人と黒人が一緒になって作った映画。『Ray』みたいな黒人の映画、『アビエイター』のような白人の作った映画がある中で、黒人と白人など色んな人種が入り混じって作れたことは嬉しいですね。
 :メルヴィン・ヴァン・ピープルズ(以下メルヴィン)—『スウィート・スウィートバック』で足りなかった部分を踏まえて、マリオがこの『バッドアス!』を作ってくれました。
 
Q:メルヴィン役を演じて、自分の中で何か変わりましたか?
A:マリオ—映画に出ることになり、彼から話していた色々なことが実際に真実だったと知ることになりました。できるだけ(昔の知人に)連絡をとったら、父がしたように借金の話だと思ったそうです(笑)。こうして今回父の歩んだ道を振り返って、そして同じような道を私は歩いていると思います。
 
Q:映画を作り続けることに重要な点は?
A:メルヴィン—僕は映画を撮る勉強はしていないので、まさか映画を撮るとはと思っています。でも黒人にとって映画は重要。映画は良い事にも悪い事にも使えるものですが。『スウィート・スウィートバック』が存在する前は黒人が演じる役が最後まで生きていることはなかった。奴隷制への言及があるのですが、今の人にはわかりにくいかもしれません。自分が変えてきたことなのですが。でも私には唯一の武器、資本主義があった。お金が稼げる映画を作ればハリウッドがきっとついてくると思ったんです。そして私は正しかったと言えます。
マリオ—今、世界のリーダーが一面化してると思います。でも私達は善人にも悪人にもなりうるんです。一般的にいえばヒーローは善人、敵は悪人だとわかりやすくなっているので、物事を深く考えずに澄むわけですね。この時代色んなものが薄まっていますから、お互いのことを理解する映画が必要だと思います。

 舞台挨拶の最後には、誕生日を迎えたばかりのメルヴィンに花束を贈呈。受け取ったメルヴィンは「(今年)39歳になりました(笑)」とにっこり。お茶目な笑顔を見せていた。
(yamamoto)

☆『バッドアス!』は10月1日(土)よりシネセゾン渋谷にてレイトショー!(ほか全国順次公開)
☆『スウィート・スウィートバック』は10月1日(土)よりユーロスペースにてレイトショー!(ほか全国順次公開)

□作品紹介
『バッドアス! 』
『スウィート・スウィートバック』