8月6日より公開中の韓国発の長編アニメーション『マリといた夏』。公開第2週目に突入する8月13日(土)には、アニメーション作家の山村浩二さん、多摩美大の片山雅博教授をゲストに迎えて“韓国アニメーションの魅力”というテーマでトークイベントが行われた。
 
 『マリといた夏』は、海辺の寂しい村で暮らす少年が不思議な出来事と現実の中で成長するひと夏を描いていく。「劇場で見るとひたれる作品。登場する駄菓子屋が日本とはやっぱり少し違っていたりして、とてもリアルな生活感がある。でもどこか懐かしい感じ」と山村さん。続けて「ファンタジーをのせて(物語を)見せたい、というのを軽々とやってる。日本の商業作品、大丈夫?と感じましたね」。ちなみに本作は、“アニメ界のカンヌ”と評されるアヌシー国際アニメーションフェスティバルでグランプリに輝いたほか、数々の映画祭で高い評価受けている。
 
 そして独特の淡い色調と、境界線がない柔らかな印象の“絵”も『マリといた夏』ならではの味わい。片山雅博教授いわく、それは昔の東映アニメのようでもあるが、本作を手掛けたイ・ソンガン監督が現代美術を学んでいたことに大きな理由があるとのこと。「イ監督は昔画家だったそうで。それがアニメを作るようになったきっかけというのが、ジブリの作品が好きだったことだそうです。しかもジブリのキャラクターではなく、描かれるドラマを見習いたいと。川本気喜八郎さんの作品とかも見てるようです。いい監督は他の人の表現力に敏感なんだなあと思いましたね」。日本の下請けを受けてきた韓国アニメの歴史は正直なところまだ浅め。お手本としてきたのはやはり日本アニメ、またはアメリカの作品だった。「韓国のアニメーションに携わってる人たちってけっこう日本語話せる人が多いんですよね。まだ韓国で日本のアニメを見られなかった時はネットで見たりして、自分達で日本語を勉強したそうなんです。何かアニメの大作が封切られると日本にわざわざ来たりとか…」(山村さん)。そんな韓国のアニメ業界はいま非常に活気があり、アニメ関連の学校が約130校あったり、海外で賞をとると国から資金を提供してもらえたりも。「昔ねんどを売ってくれってやって来た韓国の作家の人もいました(笑)。原価で譲ってあげたら、今、彼のプロダクションは50人のスタッフを抱えるくらいに成長してます」(山村さん)とのエピソードや、「韓国のスタッフは、30代〜40代で自分の場所をバシッと決める。日本は60代までずっとやる感じだけど、韓国は30代、40代の間に作品をバシバシ作らないとダメという考え方を持ってる」(片山教授)という話からも韓国アニメの勢いを感じさせる。
 
 「劇映画も撮っているイ監督だけあって、しっかり描かれている作品」(山村さん)「やっぱりいい映画はナショナリズムとか関係ない」(片山教授)と評された『マリといた夏』。懐かしさとファンタジーがうまく融合した本作、ぜひ劇場で堪能してみては?
(yamamoto)

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□作品紹介
『マリといた夏』