医師・正平の勤務する病院に入院してきた子宮ガン患者・未知子は、正平が高校時代から思い続けた初恋の相手だった。昔の正平のことをすっかり忘れていた未知子に、献身的な治療を施す正平。そんな正平のひたむきさに、頑なだった未知子は、次第に心を開いて行くのだが…。『サヨナラCOLOR』は、俳優としてそして監督として非凡な才能を発揮している竹中直人の長編監督第5作。ファンの期待も高く、また一般公開がしばらく先ということも手伝って、24日の“日本映画・ある視点”部門でのお披露目上映は、全席ソールドアウトの大盛況。
 作品の上映後には本作の監督であり正平役を自演した竹中直人、ヒロイン未知子役の原田知世、未知子の恋人・雅夫役の段田安則、そして本作にインスパイアを与え、エンディング・テーマとしても使われている名曲『サヨナラCOLOR』の作者&ヴォーカルの永積タカシが来場し、ティーチインが行われた。竹中と本作中で変なスタイリストを独特の存在感で演じていた段田は、コミカルな言葉の応酬で、ティーチインを笑いで包み、そんな様子からも撮影現場での和やかなムードがうかがえる。また、本作でサントラ初挑戦の永積は、ライブで『サヨナラCOLOR』を披露した。
 今回原田知世は、彼女自身の年齢に縛られていないナチュラルな存在感で、実年齢よりかなり年上のヒロインを好演。病室で赤いカーデガンを羽織った姿には、ファンなら一瞬『時をかける少女』の面影も見えるだろう。「命の儚さ、尊さを感じました。大人のピュアな恋愛が、本作の素敵な点だと思います」と本作への思いを語った。
 本作は、馬場当の書いたオリジナル脚本を読んだ竹中が、その世界にハナレグミの名曲『サヨナラCOLOR』を想起し、自身のアイデアを盛り込みながら共同で脚本も執筆した渾身作。「予算と時間はあまり無かったが、好きな者たちが集まって作ることができました。自分がええなと思う人を起用していくことで、自分の映画になっていったんです」と、キャスト陣との共同作業の成果に満足気。また、客席から自身の映像との出会いについて訊ねられた竹中は、「中学の時にフジシングルエイトと言う8ミリカメラが発売されたんですが、その頃は買えず、それで高校の美術部の時に部で8ミリカメラを買おうってことになったんです。美術部には憧れていた笈川未知子さんて人がいて、彼女を撮ろうと思って皆のスケッチ姿を撮ったんですよ。でも、彼女だけ映ってなくて、しまったな…と(笑)」と、照れ笑いを浮かべながらコメント。そう、本作に盛り込まれた竹中のアイデアには、彼自身の実体験もかなり含まれているそうだ。なお本作中で、高校生時代の正平を演じているのは、竹中の監督デビュー作『無能の人』等3作品で、竹中の息子役を演じていた三東康太郎。坊主頭の少年が、すっかり成長しまさに竹中の学生時代ではと思わせる怪演振りで、ファンには感慨深いだろう。その他、竹中の人脈で集まった、映画人・ミュージシャン達も、カメオを超えた存在感を見せているので、一般公開時にはそんなところも要チェックだ。
 なお、『サヨナラCOLOR』は2005年ロードショー!
(殿井君人)
※2005年8月13日よりユーロスペース、MOVIX本牧にて待望のロードショー決定!全国順次公開

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東京国際映画祭
サヨナラCOLOR

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サヨナラCOLOR