『ジョゼと虎と魚たち』の大ヒットが記憶に新しい、犬童一心監督と脚本家渡辺あやのコンビ。この二人が再びタッグを組んで生み出した最新作『メゾン・ド・ヒミコ』が完成した。オダギリジョーと柴咲コウを主演に迎え、ゲイのための老人ホームを営む元カリスマゲイバーのママだったヒミコとその若く美しい愛人、そしてヒミコに捨てられた過去をもつ実の娘。この三角関係を詩的に、かつポップに、そしてせつなく描きあげた傑作が誕生した。
 舞台挨拶には犬童一心監督、脚本の渡辺あや、主演のオダギリジョー、柴咲コウ、またヒミコ役の田中泯が登場した。
 
 犬童監督はようやく完成したこの作品をこう語る。「2000年からシナリオを作り始めててすごく長い時間この作品に関わっていたので今この場にいることが不思議な感じがします。当時はまさかこういうキャストでこんな映画に仕上がるとは思ってなかったので、4・5年かかって色んなことがあって色んな人が集まってこうなりました、という結果を見届けるような気持ちです。前作の『ジョゼと虎と魚たち』を作る前からあった作品で、誰にやってもらうか考えて、いちばん出てほしい人に出てもらえてシアワセな映画になりました。」
 またこのシアワセは、音楽に十三年ぶりに映画音楽を担当する細野晴臣を迎えたことでさらに広がる。「『銀河鉄道の夜』の音楽が大好きで、公開当時、僕の映画じゃなくてもいいからいつかまた細野さんが音楽を担当した映画が観たいと思っていたんです。すごく昔に思ったことが自分の映画で実現できてうれしかった。」
また、二人の子供がいるようにはとても見えない、脚本の渡辺あやは犬童監督をこう語る。
「犬童さんとの仕事は、もちろん深く信頼してはいるつもりですが、なるべく信じないようにもしています。信頼しきってしまうことが私にとっては怖いことだと思うので、監督を「くせ者だな」と思ってやりとりしていました。」すると犬童監督もそれに賛同し「監督と脚本家の関係はそうであった方がいいものが作れると思います。」とニヤリ。なかなか共犯関係である二人にしかわからない微妙な関係のとり方をしているようだ。そこがこのコンビが生み出す作品の魅力になっているのかもしれない。

鈴木清順監督『オペレッタ狸御殿』での伊達男役が記憶に新しいオダギリジョーは、今回ゲイの若い愛人役というひとひねり効いた美男子の役の方が生き生きしているように見えた。本人も「試写を一緒に観たマネージャーから「『アカルイミライ』以来いいね!」と微妙なことを言われました(笑)。でも、僕もそういわれて納得できる部分もあってすごく好きな作品になりました。共演の柴咲について)とんがってるとこはとんがってるなって感じがして、一緒に芝居をしていて刺激されることも多かったです。田中泯さんは普段やってる踊りと芝居は別物だと思いますが、一緒に現場に入っていると『表現』とはこういうものだよなって再確認させられることが多かった。」と語る。

また、今回ほとんどすっぴんに近いような質素ないでたちで地味な事務員の主人公沙織を演じる柴咲も、いままでとはまったく違ったこの役柄で女優としての力強さを印象づけた。
「あんまり仕事してないくてぐでっとしている時の私と沙織は似ています。私こういう仕事をしているからそう思われないけど私生活はけっこう地味なので(笑)。ミンさんは初めて仕事でお会いしましたが、演技なんてしたことないとおっしゃっていましたが、現場にいて衣装をまとった泯さんはヒミコでしかなくて、背負っている重さが圧力になってきてそれに立ち向かわなければならないって気がしました。引っ張ってもらっていたと思います。オダギリさんは何しててもかっこよくて、ハルヒコでもかっこいいし、普段の立ち振る舞いもかっこよくてすごいなあ!と思いました。」とオダギリを誉めると彼の頬がぽっと赤く染まる場面も。

また、ダンサーを本業とし『隠し剣 鬼の爪』でも印象的な存在感をみせた田中泯は、今回作品の象徴となるヒミコというタイトルロールを演じた。
「とにかく脚本を読んでやってみたいなと思いました。役というより「ヒミコをいう人」をやりたいという風に感じました。二人との共演は、僕のほうこそ引っ張ってもらったと思います。すごい刺激になりました。そんなにオーバーな演技をするシーンはなかったんですが、普通の動きのなかでドクドクしているものが見えるようなものが体の中に動いていた。素晴らしいダンサーをみるような気持ちで二人を見ていました。」力強く語った。

※最後にこの映画を観る人へのメッセージ

犬童「この映画は三行で説明できないこともないけど、そうするとこぼれるものが多すぎる。見た後人に説明するのも難しい作品だと思います。僕はたいがいそういう映画は作らないようにしているんですが、どうしても作りたかった作品なので仕方ないんです。」
渡辺「犬童さんは一筋縄ではいかない私にとっては正体不明の方で、私より一応十歳年上の男性で、素敵な奥様がいる方なんですが、私にはそういうプロフィールが信じきれない(笑)。いつか男じゃないとか、すごい告白が出てくるような気がしているそんな人なんですが、そういう犬童さんとだからこそ一緒にお話を作っていくパートナーとして組めたんだとおもいます。」
オダギリ「色んなテーマが入っていて、どれもあったかくて、愛情のこもった、そういう作品です。笑えるところもたくさんあるし、楽しんでみてほしいです。」
柴咲「はじめて観たとき、すごく懐かしい感じがしまいた。心のどこに置いていいのかわからない感じの映画ですが、必ずどこかに置いておきたい感覚に襲われました」
田中「いい映画だと思います。(と力強く)」

日本映画の水準を一歩も二歩も上げてしまったといえる大傑作!日本映画でありながらヨーロッパのアート系映画を観ているような趣もなきにしもあらずな不思議な作品。要チェックです。
(綿野)

★『メゾン・ド・ヒミコ』は2005年晩夏、シネマライズ、新宿武蔵野館、池袋シネマサンシャイン他ロードショー!

◆作品紹介
『メゾン・ド・ヒミコ 』