5月31日(火)、紀伊国屋ホールにて作家の井上ひさしさん、映画監督の黒木和雄さんによる対談「戦後60周年、後世に伝えるもの〜『父と暮せば』を語る」が行われた。宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信出演『父と暮せば』は、井上ひさしの同名戯曲を原作に黒木監督が映画化した作品で、『TOMORROW/明日』(88年)『美しい夏キリシマ』(03年)に続く“戦争レイクイエム3部作完結編”でもある。対談では、“戦争”に深い思いを持つ二人がそれぞれ率直に語っていった。

Q:映画化について
A:井上ひさしさん「映画ならではのシーンがいくつかあって、たとえば宮沢さんの鏡台のシーン、外のシーン、あと図書館に青年が入ってきて、俯瞰で撮っているシーンとか。どうやっても芝居では無理で、映画だからできる素晴らしい表現だと思います。キャストについては批判するところなんてないですね。宮沢さんなんて初日から台詞をきちっと憶えていて。だから原田さんは初日は『りえちゃん』だったのに、次の日から『宮沢さん』って呼んでた(笑)」

黒木和雄監督「井上さんが書いたものは演劇的な時空間なので、映画化は大変と思いました。それでもできるだけ井上さんの芝居を映画化したかったのですが、登場人物が二人だけだと(映画として成立させる)自信がないので、(キャラクターに)青年を1人加えて、家の外のシーンも登場させたんです。台詞を変えてもらったところもあります。それは「美人じゃないけど…」というシーン。宮沢さんにその台詞は説得力がないということで(笑)。あと、原田さんの役が幽霊だってはっきり言ってくれ!って二人くらいから抗議されました(笑)」

Q:戦争について
A:井上ひさしさん「戦争で亡くなった人が書き残したものは5万点くらいあるんです。生き残った人は(生き残って)申し訳ないと思っている。日本はやってきたことを忘れ過ぎていると思いますね。生き残った者として申し訳ないと思わないと、広島・長崎のことは書けないと思っています」

黒木和雄監督「『美しい夏キリシマ』は少し自伝的な要素があります。そして『父と暮せば』を観た時、ヒロインと重なる部分が多かった。僕はかつて戦争で瀕死の友人を見捨ててしまったことがあって、ヒロインの後ろめたい気持ちを自分も背負っていたんです。だから(『父と暮せば』を)映画化したいと思ったのですが、映画化しても背負った重みは一緒です」

Q:次回作について
A:井上ひさしさん「同じ場所にいた人が亡くなって、自分は生き残る。“生き残って申し訳ない”というのがテーマ。広島を書いたので、次は長崎を書きたいと思っています。原爆は人がやったこと、人間が造って落としたもの。人間がやったことを運命として受け入れるのはおかしい。(誰かが)きちっとけじめをつけないと、2度3度起こってしまいますから」

黒木和雄監督「いつも次回作は白紙に近いけど、特攻隊が関わる物語になる予定です」

(yamamoto)

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(関連情報)「日本映画界の巨匠・黒木和雄監督の戦争レクイエム三部作、ここに完結『父と暮らせば』DVD発売!」

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