今週末公開を迎える瀧本智行監督デビュー作『樹の海』。監督は、今作品でデビューするとはいえ、TVドラマの脚本を数多くこなし、さらに助監督として降旗康男監督『鉄道屋』、高橋伴明監督『光の雨』、また佐々部清監督の『チルソクの夏』などの名作の助監督を務めてきた実力派である。物語の核となる4つのエピソードにはそれぞれ萩原聖人さん、井川遥さん、池内博之さん、津田寛治さんが揃い、生命の物語を渾身の演技で紡ぎだしている。今回『樹の海』上映を今週末にひかえて、作品のテーマである未だ謎多き”樹海”についていろいろな角度から掘り下げようと、瀧本智行監督、青島武プロデューサーに、廃墟&樹海探検家で評論家の栗原亨さん、映画評論家の塩田時敏さんも加わりそれはそれはディープな、日本初(?)の樹海イベントが新宿ロフトプラスワンで開催された。

まず、『樹の海』の映像を見ながら樹海を語るコーナーということで、4エピソード中の紅一点、キヨスクの女店員役を演じた井川遥さんについて瀧本監督は「とても失礼かもしれませんが、彼女のキャリアの中で一番ブスに映っているんじゃないかと思います。そこが等身大というか、キヨスクの中にいても全然おかしくないリアリティがでているんです。男性のアイドル的な存在だった彼女の、本来持っている魅力が出ているんです。」と絶賛。そして青島プロデューサー曰く、「今日乗った電車の中で、乗る前に立ち寄ったキヨスクの相手の顔なんて覚えてないと思うんです。だからこそここに人と人とのつながりを描きたかったんです。」と、日常生活に潜む人間同士の関係性を切り取ったという作品のメッセージを語ってくれた。

続いて、映画評論家の塩田時敏さんが送る、これを観てから『樹の海』を観に行け!
という特選映画を紹介、ジョン・ボイドの『脱走』、そしてデビューした頃から好きでビデオを集めていたという、先日不遇の死を遂げたイ・ウンジュのまさにデビュー作『にじます』など自身が観たことあるものからないもの(!)まで、こだわりのセレクトを披露した。そしてついに!本日のメインとなる、廃墟&樹海探検家で評論家の栗原亨さんが登場!冒険が趣味であることから毎週1回は富士山麓の青木ヶ原樹海へ通い、とうとう自著である『樹海の歩き方』を出版してしまった栗原さんは、まさに今すぐ樹海に行ける重装備の樹海スタイルで登場。GPSやコンパスや、スズランテープなどの対樹海グッズを前にますます樹海の臨場感高まる会場・・。そして、実際に発見したという数々の樹海に残された遺留品、木に掘り込まれた生命の叫び、心中した男女の直前までそこにいたかのような寝袋の残骸など、とてもじゃないけれど見たことの無かった樹海の様子が次々と語られていったのであった。実際に樹海を撮影に使った監督からも、「半径数十メートルに散らばった37万ほどのお札を見つけました。言葉が出なかったですね・・。届けた後、また寄付をしましたが。」という驚愕の実体験が告白されると、栗原氏からは「実際に自殺をするということはとても勇気のいることなんです。所持品をばらまくということは人生を断ち切るという儀式、人生を離れる儀式なんだと思います。」との考え深いコメントが・・。さすがにディープ過ぎて、これにはただうなずくしかできなかったのでした・・。

◆生命の輝きの物語『樹の海』は6月25日より渋谷シネ・アミューズにてロードショー公開!

(Yuko Ozawa)