“生きること”の意味を我々に問いかける、壮大な冒険ファンタジー

2006年<お正月>ロードショーとなる『銀色の髪のアギト』の製作発表記者会見が6月9日六本木ヒルズにて行われた。

会場には、杉山慶一監督をはじめ、まだアフレコを録り終えたばかりという勝地諒、宮崎あおい、布川敏和、濱口優(よゐこ)、大杉漣、といったそうそうたる俳優陣が駆けつけた。

主人公アギトが暮らす世界は、遺伝子操作の失敗によって“森”が人を襲うようになってしまった300年後の未来。だが、そこにはたくましく愉快に生きる人々の姿があった。アギトはある日、過去から来た少女トゥーラと出逢う。彼女は、文明社会を復活させるという使命を背負っていた。そんな彼女を命懸けで救いたいと、ついに“森”と契約して禁断の力を手に入れ“銀色の髪”に変わるアギト。ふたりを翻弄する<使命>と<禁断の力>は、物語をどこへ導くのだろうか?

荒れ果てた地球で運命的に出逢った、未来の少年アギトと過去から来た少女トゥーラ。ふたりは互いに惹かれあいながらも、育った環境の違いにとまどい、葛藤しながらも、成長してゆく。強く優しい友愛をデジタルアニメーションで紡いだ壮大な感動巨編。

監督は「新世紀エヴァンゲリオン」「シティーハンター」のスペシャル版など数々のアニメーション作品を演出してきた、杉山慶一監督。今回は初監督とのことだが、「初めてにもかかわらず、そうそうたる面々のキャストや、音楽など、かなりこだわらせてもらった」
キャスティングに声優を使わなかった理由としては、「声優というプロが演じると、映像に対しての演技がステレオタイプになってしまうと思った。キャラクターに声をあてるというよりも、感情をおいてゆくようにしたかった」自然を取り上げたということについては、「エコロジーというより、むしろ反エコロジーな作品かもしれない。人間が自然を守るというのではなく、自然は大きなもので、人間はその中で居場所を見つけていくという考えをもとにした作品です」。

主人公の少年アギトを演じるのは、文化庁芸術祭大賞を受賞したTBSドラマ「さとうきび畑の唄」で注目を集めた勝地諒。主人公である未来の少年アギト役で、声優に初挑戦したことについて、「良い経験になりました。主人公がふんばったりする時の息づかいなど、初めは大変だったけど、段々とアニメーションに合わせられるようになってくると楽しくなってきました」見所を訊かれると、「主人公アギトが少年から男らしく成長していく過程を見て欲しいです」。

過去から来た少女・トゥーラを演じるのは、出演した『EUREKA(ユリイカ)』が第53回カンヌ国際映画祭 国際批評家連盟賞など受賞し、国内外から大きな注目を浴びて以来映画を中心に幅広い活動を続けている宮崎あおい。彼女もまた、アフレコは初挑戦ということで、初めは苦戦したという。トゥーラについては、自分が守ろうと思うものを懸命になれる女の子。「普段の演技だと顔の表情で伝わるが、今回は、キャラクターの表情を観て、どういう声をだすのか想像して演技しました」。

アギトの仲間の男の子・カインを演じたのは(よゐこ)の濱口優。3時間の収録時間予定を2時間で終わらせ、スタッフにセンスがあると誉められたなど、意外な才能を発揮したようだ。「映画は、僕の雄叫びから始まるので、まずはそこに注目して欲しいです(笑)」また、セリフについては「前半は雄叫びのみです(笑)」大変だったところは「大阪弁が入ってしまって何度かやり直した。ため息をリアルに演じたら、スタッフにおっさんのため息だから、少年っぽいため息を出すように言われました。(笑)」。

主人公の親友カインの父親役を演じたのは、自らも娘と息子がいるという布川敏和。役を演じるにあたって、「拳で岩を叩き割るシーンで思いっきり叫んで声を潰してしまった」と、かなり役に入れ込んだ様子。作品については、「実写では描けない、アニメならでは実現できた背景やストーリが魅力。家族で観て、大人も子供も勇気をもてる作品です」

アギトの父、アガシを演じたのはドラマ・映画・CM・ナレーションに数多く活躍している大杉漣。「アフレコをするのは初めての大変だったが、声をあててると不思議と体が動いたりと、とても面白い体験だった」作品については、「いつの時代にも通じる普遍的な父子の関係が根底にながれています。とても優秀なスタッフ達で丁寧に作られた作品です」。

アニメーションを手がけるのは3−CGをふんだんに使い、手書きアニメーションと融合させて独自の感覚を磨いている最先端映像製作スタジオ「GONZO」。監督のこだわりのスタッフ・世界観と最先端の映像で、どのような世界が現れるのか。早くも楽しみとなるお正月映画である。
(T,S)

2006年<お正月>ロードショー

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