——バトラーとのエレベーターでの戦いや、クライマックッスでのジョーカーとの対決は、そうした重力を感じさせつつ、アニメーションの自在さを感じさせる大アクションになっていたと思いますが、アクション演出で心掛けられたポイントは?

 「アクション演出のポイントは、最初の『ダイハード』で次から次へとテンションが上がっていく上り坂の流れにするというのと、ジャッキー・チェンのアクションをMr.ビーンがやったどんなテイストになるかという感じでした。やはり子供の頃はジャッキー世代だったので、完璧に洗礼をうけているんですよ。僕自身も格闘技とかやっていて、運動神経はいいほうなので、キャラクターもすごく動かしたい。それもどちらかと言うと、『ウォレス〜』のウワ〜ッって感じより、もっと筋肉を使って動いてるって感じにしたかったんです。 アクションシーンの撮影は大変ではありますけど、普通の場面を撮っている時よりもアクションシーンを撮っている時のほうが、意外とストレスは少なかったかもしれませんね。飛んだりする場面では、針金をいっぱい立てたり、人形を持っている手を後から消したりというところが、僕も大変でしたけどコンポジットで消す作業をしてくれた人が大変だったと思いますよ。むしろリズムとかテンポとかは、普通のシーンよりアクションシーンの方が撮りやすかったりつかみ易かったりしましたね。
 一番難しかったというか大変だったシーンは、トイレに流れて消えるシーンで、あそこは何度やっても動きが早すぎてしまったりで、流れた感じを出すのが難しかったですね。そこだけは3回くらい撮りなおしましたね。ネタ的にも気に入っているところだったので、なるべく判りやすくしたいと思いましたし」

——コミカルでありながら、ゴシック的な要素も効いていますよね

 「やっぱり好きなんですよね。一番好きなマンガは『ジョジョの奇妙な冒険』だし。ああいうこってりしたのが好きなんですよ。
 敵のボスであるジョーカーに関しては、わりとロックな感じにしたかったんです。色々と自分で敵のキャラクターに対する大雑把なイメージはありました。服だったら悪魔的・髑髏的なものを結構カッコよく使っていて若者に人気のあるナンバーナインだったり、すごくバカでセンスのいい子供がデザインしたような車が多くて滅茶苦茶かっこいいホットホイールというミニカーとか。それとドラキュラ城みたいなラベルが張ってあるワインがあって、その三つのイメージから出来たのがジョーカーなんです。彼はパイロットにも出ていたんですけど、その時はあまり悪魔悪魔してなかった。それと、『レメゲドン』という書物があるんですが、それに出てくる悪魔も好きで、ジョーカーのフルネーム“ジョーカー・オー・アンドラス”は、そこに出てくるアンドラスと言う悪魔から取っています。アンドラスの顔が梟で体が人間で、炎の剣を持って狼に跨っているという要素も、設定にも加えてあります。
 でも、それこそ昔の『タイムボカン』シリーズとか、『筋肉マン』だったりとか、自分の好きだった色々なものの要素が混ざりすぎていて、元がもうわからないというのはあるかもしれませんね(笑)。常に熱中してないと嫌な子供だったので、いろいろなものに熱狂して、それらが全て集約されたって感じです」

——劇中の台詞は、何語でもない擬音表現的な“緑玉語”になっていますが、それは国籍を超えて誰からも楽しんで欲しいということですか?

 「それもありますね。特にプロデューサー的にはそれがあったと思うのですが、実はパイロット版では僕自身が関西弁で台詞をつけていたんですよ。それでもよかったんですけど、やはり言葉を使わないほうが、映像で全てを見せねばならないわけで、その分かなり難しくなっちゃうんですけど、そのかわりそれをクリアできれば僕自身のレベルも上がりますし、やはりそこを映像で見せる映画こそが面白い映画だと思うんですよ。スピルバーグも音を消して見れる映画が面白いと言ってますが、そういう意味でも絵でみせていくことを逃げずに、台詞が無いものも通っていかなければならないって感じですかね」

…To be continued.

☆『緑玉紳士』は2005年4月30日より、渋谷 シネマライズほかにてモーニング&レイトロードショー公開!
(殿井君人)

□栗田監督インタビューリンク
栗田やすお監督インタビュー −1−
栗田やすお監督インタビュー −2−
栗田やすお監督インタビュー −4−
□作品紹介
緑玉紳士
□公式頁
緑玉紳士