——本作に留まらず、ドンドン世界が広がって行くと

 「そうですね。他にもちょこちょこやると思っているんですけど、自分の大きなメインとしては、本作のエピソード2を70分から80分くらいの尺で長篇としてちゃんと作りたいなというのがありますね。ただそうなると、次は人の問題ですよね。セットを作る人間はそろえることができますが、やはり一番のネックは撮影ですよね。アニメーターとかを、どうしようかなと。大雑把に言うと、すごくお金が掛かっちゃいますけど、ハリウッドやイギリスのプロダクションと組んで撮影するか、もしくはアニメーションが出来る人材を育てる段階からやっていくかのどちらかですね。いずれにしても、本作が公開されてからの反響によって、具体的に決まって行くと思います。

——グリーンピースの売っている眼鏡を初め、細かい部分まで奇天烈なアイデアがめじろ押しですね。なんでも以前から、ネタ帳をつけられていたそうですが

 「高校時代は公立ですが美術系の学校だったので、普通の授業プラス美術の基礎を徹底的に叩きこむみたいな感じで忙しかったんですよ。課題とかもよく出されて、それの準備のためにも色々なネタを揃えておかないと対応できないような部分もありましてね。それで授業中とかにつけていたりして(笑)。後はバイトの合間なんかにザラ紙に書いたものを、ビックリマンチョコみたいにノートにはっていったりして。それでデザインのいい奴をピックアップしてみたりしておきまっした。
 ストーリーとかでのちょっとしたアイデアに関して言えば、僕はこう行くと思ったら、寄り道して…みたいなところがあって、いつも順序立てて組み立て考えるタイプではないんですよ。だから自分でもその時にはなんでこんな答えを出したのかわからなかったりして。でも時間が経ってくると、全部あとからついてくる…みたいなアイデアの後付が多いんですよ。多分僕の頭は、左脳の方が遅くて右脳の方は超高速回転してるというか、右脳のぱっとでたものに左脳がゆっくりついてくる。それで出来上がると、まぁまぁちゃんと意味が繋がっているんですね」

——大活躍(?)するカメラ眼鏡は、ちょっとヤン・シュワンクマイエルのコマ撮りアニメのテイストを感じましたが

 「シュワンクマイエルは勿論僕も大好きで、あの独特な影の部分は取り込んでいきたいですね。ただあのカメラの部分は、それ自体のアイデアはどこからきたのかよく覚えていませんが、ネタはヒッチコックの『裏窓』からですね。ヒッチコックも大好きなんですよ。
 シュワンクマイエルは『悦楽共犯者』が一番好きかも知れないんですけど、あの人の作品は映画というより一夜の悪夢を見てる感じじゃないですか。アニメーターというより、まさに魔術師、本人も言ってますけど黒魔術みたいな感じですよね。
 人形アニメーションの魅力には、そういう魔術的なところがあると思うんですよ。普通のアニメーションと立体アニメーションの違いとしては、セルアニメやCGには重力がないけどコマ撮りアニメーションには重力がある。やっぱり重力があるとないとでは、生命感とかも違ってくるんですよ。人間も重力に左右されているじゃないですか。結構面白いのは『ガンダム』では、ジオンの人間が「地球人は重力に魂を支配されている」みたいなことを言ってたり、僕の好きな山口雅也さんの小説『キッズピストルズの慢心』の中には重力を研究している登場人物がでてきて「重力こそが神である」と言っている。重力と生命には結びつきがあるんじゃないかなという気がしないでもないですね。後は技術的なことで、いくらCGが進化しても出せないテクスチャーとか、質感、味とか匂いってあるんでそういう部分ですよね。まぁ監督という立場で言えば、CGって楽ではあるんですけどね(笑)」

…To be continued.

☆『緑玉紳士』は2005年4月30日より、渋谷 シネマライズほかにてモーニング&レイトロードショー公開!
(殿井君人)

□栗田監督インタビューリンク
栗田やすお監督インタビュー −1−
栗田やすお監督インタビュー −3−
栗田やすお監督インタビュー −4−
□作品紹介
緑玉紳士
□公式頁
緑玉紳士