鈴木光司の原作を映画化し、和製ホラー・ムービー・ブームの端緒となった『リング』を、ハリウッドがリメイクした『ザ・リング』。日本でもその恐怖表現を巡って賛否両論をまきおこしながら、大ヒットを記録したハリウッド版の続編がついに日本でもベールをぬごうとしている。『ザ・リング2』は前作でも脚本を担当したアーレン・クルーガーのオリジナル脚本を、本家『リング』『リング2』を手掛けた中田秀夫監督がハリウッド・デビュー作として、元祖の底力を見事に作品に刻印してみせた快作だ。本作以後もハリウッド製作作品の企画が続く中田秀夫監督が、4月8日凱旋帰国を果たし有楽座にて披露試写会と凱旋来日会見が開催された。
 既に公開済みの全米・全英では、共に初公開第1位の興行成績を記録し、欧米に恐怖の旋風を巻き起こしている『ザ・リング2』。披露試写終了後の会見に現れた中田監督は、『リング』の頃のロードショー劇場巡りをした頃の思い出を挿みつつアメリカでの観客の様子などを報告「アメリカやヨーロッパで好成績を修めて帰国というのはやはり気持ちがいいもので、ありがたく思っています。アメリカの初日は夜の10時・11時代の回でも超満員で、自分の作品を見ている観客から悲鳴やざわめきが起きるのを体験するのは監督冥利につきますね。そしてやはりやはり日本のお客さんに楽しんでいただきたいので、日本公開を各国での公開の総仕上げとして一生懸命やらせていただいております」。
 純正ハリウッド作品となる本作。製作サイドからのリクエストや、製作体制の違いについての質問に対しては、
 「サマラの表現は地味な方がいい、動かないほうが恐いという日本的・アジア的な幽霊表現の方がアピール力があるんだというリクエストをされ、ちょっと意外に思いましたね。実際には動くサマラも撮影したんですが、フリーマーケットやエイダンの部屋のサマラとか、ほとんど動いてないものの方がいいということで使いませんでした。
 撮影のエッセンス、創意工夫を重ねていいものを作りたいというスピリット面では、日本もハリウッドも何も違いはないと思います。お金や時間の量的な差はありますが、質的には同じだと感じました。ただしテクニカルな面での違いで言うと、日本の映画監督はたいていコンテを書いて、構成を考えてその通りに撮影し編集段階で若干削ったりする、無駄のない撮り方をするんです。これに対してハリウッドでは、そうした撮り方では必ず撮り直しになってしまうんです。何故かと言うと、テスト上映の結果によって作品の最終形態を、後から編集でドンドン変えていかなければならないので、そのためには素材をいっぱいとらなければならないわけです。カメラは大体2台同時に回し、俳優さんは細切れではなく通して演じるのを、いくつかのポジションから繰り返し撮るわけです。最初はトヘトになりましたけど、集中力さえ途切れなければ、こういう作り方もありだなと思いましたね。最終的には捨てる部分が圧倒的に多いわけですが、フィルムは原稿用紙なんだからという考え方で撮っていくことが一番大きな違いでしたね」と語った。そうした撮影で、オリジナル監督として中田監督が拘ったのはどういった部分なのか?
 「今思いつくものでは二つあります。アメリカのネットなどで『ザ・リング』のマニアの方々が、『ザ・リング2』を見てサマラが貞子に近いと指摘する人がいて、そういう風に意識したつもりはなかったんですが、そう言われればそうなのかなと。サマラは言わば影の主役で、彼女のショットを撮る時は時間をかけて撮ったんですが、そういう時には知らず知らずのうちに最初に『リング』を撮っていた頃を思い出していたので、貞子的なサマラになっていったのかなと思いました。また気をつけたこととしては、どうしてもサマラの登場シーンが多くなるので、あまり恐怖のつるべ打ちが多くなって観客の感覚が麻痺しないように、静かになるところは特に静かになるように音の面でさりげなくすることを心掛けましたね。『ロード・オブ・ザ・リング』等にも参加しているサウンドデザイナーも、僕のそうした意図を的確に理解してくれてました」
 また本作には、やはり鈴木光司原作を中田監督が映像化した、『仄暗い水の底から』とも共通する母子の絆のドラマが前作以上にクローズアップされている。
 「アーレン自信も『仄暗い〜』を見て参考にした部分もあったようですが、僕がこの脚本を読んでOKした最大の理由が、母が子を守る話だという部分で、そこも『仄暗い〜』と通底してますね。さらにその子自身が呪われた存在であって、自分がとても危険な賭けに打って出てもその子を守らなければならないというジレンマに陥った母親の話に惚れ、僕の『リング2』とは全然違う作品になると思って受けたということです。母子のドラマは、僕の性にあってますし、人間関係の最もベーシックなものとして全世界にアピールできるものなんです。ただ、それだけをやりたいというわけでもないし、僕の方からそれを要求したわけではないんです。『仄暗い〜』にしても『リング』にしても、この『ザ・リング2』にしても共通するテーマではあるのですけど、それは僕が題材を選んだと言うよりも、題材が僕のほうにきてくれて、それを僕なりに料理させてもらったという方が正確だと思います」
 次回作には香港=タイ合作の心霊ホラー『【アイ】』のハリウッド・リメイクを、トム・クルーズのプロダクションで撮ることが決定しており、早ければこの夏から撮影に入る予定だとのこと。この夏、『ザ・リング2』が恐怖のドラマで日本の観客を魅了している頃、中田監督はハリウッドでさらなる大きなステップを踏み出しているに違いない。
 なお、『ザ・リング2』は2005年6月18日より有楽座他にて全国東宝洋画系にて一斉ロードショー!
(殿井君人)

□作品紹介
ザ・リング2
□公式頁
ザ・リング2