韓流四天王の一人イ・ビョンホン、その美貌から多くの女性ファンを獲得している彼だが、ここまでのスターにのし上がった理由は、第一に俳優としての能力の高さであることはいうまでもない。『オールドボーイ』パク・チャヌク監督との『JSA』、今年二月に惜しくも夭折した人気女優イ・ウンジュとのラブストーリーの名作『バンジージャンプする』、チェ・ジウとの共演が話題となり大ヒットとなった『誰にでも秘密がある』など超一流のクリエーター達といくつもの傑作をつくりあげてきた彼が、今回選んだのは『反則王』『箪笥』などのヒット作で知られるキム・ジウン監督とのコラボレーション。パク・チャヌクやポン・ジュノとともに韓国の若手監督の中で最重要人物として注目を集めている彼と今をときめく大スター、イ・ビョンホンの強力タッグによって作られたのがこの『甘い人生』だ。
 イ・ビョンホンが演じるのは、金も地位も名誉もすべてを手に入れ大いなる自信をもって人生を謳歌する主人公ソヌ。だが一人の女性を愛したことで持っていたものすべてを失うこととなり破滅の道へと陥ってしまう。『甘い人生』というタイトルが痛烈な皮肉になっている切ないフィルムノワールである。
 4月7日、この映画の写真展が開催されている伊勢丹新宿店の屋上で開かれた会見には、イ・ビョンホン、キム・ジウン監督の二人が登壇した。
 史上初の日韓同時期公開となるこの作品だが、イは「日本や海外のたくさんのファンの方々が韓国の初日に駆けつけてくれました。この映画を観るために飛行機に乗ってホテルを予約してわざわざ来てくださって本当にうれしかったです。映画をいち早く真っ先に見たい!という信念に感謝しています。」と日本より一足早く公開された時の様子を語った。「昨日成田空港に来てくださったファンの方々の中には、これまで何度か行ってきた試写会や舞台挨拶にも来てくれていた顔なじみの方も何人かいました。」と熱心なファンの顔を覚えてそれに応えるファン思いなコメントも。
 さて、作品についてだが、「これは私の代表作になる」と宣言しているほどこの作品には並々ならぬ思い入れをもつイだが、実際この役を演じたことで彼の俳優としての生き方はどう変化したのだろうか。
「人生観や自分の変化は今すぐにわかることではなく時間がたってから少しずつ客観的にわかってくるかもしれません。でも俳優人生において本当に大事な作品であることは確かです。苦労したから、ではなく単純にすごくいい作品にめぐり合えた。これはよく使われるような常套句として言っているのではなく、本当にそう思っています。スタッフも超一流の素晴らしいメンバーで、キャストも一人一人が主役をはれる位の役者がそろっていて、みんなで力をあわせて作り上げたものだと思っています。」
アクションシーンも多く撮影は困難の連続だったのではないかと想像されるがキム・ジウン監督は
「ただ単にアクションシーンを見せるための映画ではなく、アクションには主人公の繊細な感情が常に盛り込まれています。そこが一番重要なシーンだったし演出も悩んだところ。だんだんとアクションの強度が増していくにつれて主人公の内面もだんだん荒々しくなっていくところがシンクロしています。この映画はノワールだと思っていて、ノワールというのはいわゆる任侠ものに近いところがありますが、しかし美学や哲学が中に含まれているものなのです。」と硬派な視線で語るジウン監督。しかし、撮影中のエピソードとなると「エスプレッソを飲む手元をクローズアップして撮影するシーンで砂糖をいれてかきまぜるという仕草がどうしてもうまくいかなかった。みかねて監督自身でそれをやってみたんですが手がふるえてて僕よりも全然うまくできてなかった(笑)。その後、結局僕がもう一度やってそのシーンの撮影は終わったんですが、フィルムをみてると使われているのは監督の手だったんですよ(笑)」とイが裏話を暴露すると、真っ赤な顔をしてジウン監督は「色々編集してたらどの手がどっちだかわからなくなってしまいました。(日本語で)ゴメンナサイ!」と笑顔で謝罪するお茶目な一面も。イとジウン監督の仲のよい一面がうかがえた瞬間だった。
(綿野)

※『甘い人生』は2005年GW公開予定

□作品紹介
『甘い人生』