昨年11月に2週間の限定レイトショーとして渋谷のユーロスペースで公開し、スマッシュヒットを記録したピンク映画界の鬼才・いまおかしんじ監督の『たまもの』。ピンク映画というと女子には敬遠されがちかもしれないが、そういった人たちにこそ是非この『たまもの』は観ていただきたい。もう決して若くはない女性のピュアな愛情とすげなく振られてしまう切なさをファンタジックに描いたこの作品は、凡百な一般映画がいくら束になってもかなわない深い作品世界をつくりあげており、好きな男のために妄信的につくしてしまう恋愛下手な主人公の姿には、女の子なら意外と共感できる(?)のではないだろうか。
 4月2日、テアトル新宿では『たまもの』のDVD発売を記念していまおか監督作品、主演女優・林由美香の出演作品の新作・旧作によるオールナイトイベントが開催された。
 上映前には、いまおか監督、林由美香さんはもちろん、『たまもの』で由美香さん扮する愛子の相手役・良夫を演じた吉岡睦雄さん、愛子から良夫をうばってしまう郁美を演じたピンク界期待の新星・華沢レモンさん、また2本目の上映作品『イボイボ』の主演の川瀬陽太さんが舞台挨拶を行った。トークイベントも開催され、いまおか監督、林由美香さん、川瀬陽太さんが再び登場、特殊翻訳家の柳下毅一郎氏を交えて撮影の裏話などが語られた。
 2本目に上映された『イボイボ』は96年の作品でいまおかしんじ監督2作目。諸事情によって(理由はイベントに来た人だけの秘密)未ソフト化であり、上映の機会もめったにない貴重な作品の久々の上映に「若くなきゃ撮れない作品だね」とゲスト陣それぞれ感慨深げに感想をもらす。劇中、主人公の回想の中にだけ登場する幻の女を演じた林由美香は、「すごくキレイに撮ってもらってとってもうれしいです!」とコメント。こちらでも『たまもの』同様に言葉を発しないキャラクター設定をされている。「シンちゃん(いまおか監督のこと)には『おまえは(現実に生きてるような)リアリティがない』って言われました(笑)。でも『たまもの』もこれまでの芸歴重ねてきたなかでも自分の代表作です!って言える作品になったと思っているのでシンちゃんには感謝しています。」といまおか作品には大満足の様子。しかし『たまもの』撮影時のエピソードとなると、「これまで女優やってきてこんなに絞られたの初めて!しかも「どこがどうダメなのか」をはっきり言ってくれなくて、ただ何度もやらされているっていう感じでした。愛子が良夫を殺してしまった後のシーンなんて、何度もやりすぎて頭がぼーっとからっぽになって、自分でもなにをやっていたのかわからなかった位。」と知られざるいまおか秘話を暴露。対するいまおか監督は「たしかに『イボイボ』の時はもっと色々口出してたかもしれないけど、今はあんまり自分から芝居をつけたりはしてないですね。役者さんから出てくるもので勝負したいっていう気があるんですよね。」とポツリ。なるほど、そこから奇跡ともいえる林由美香のあの愛子像が完成したのである。その後、イベントは女池充監督による林由美香主演最新作『ビタースウィート(濃厚不倫 とられた女)』の上映、つづいて今岡監督の01年の作品『アナザーマン(濡れる美人妻 ハメられた女』 ラストを迎えで訪れた観客は朝を迎えたのであった。
(綿野)

□作品紹介
『たまもの』