ベルリンを駆け抜ける若き反逆者(エデュケーターズ)たちの青春像が観客の共感を呼び、本国ドイツでは昨年11月に公開されるや大ヒットを記録、またドイツ映画としては11年ぶりにカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品される等、ヨーロッパ各国で興行的にも作品的にも高い成功を収めた青春映画『ベルリン、僕らの革命』が、いよいよこの春、日本に上陸する。去る1月、本作の主演を務めたダニエル・ブリュールと監督のハンス・ワインガルトナーが、本作のプロモーションのために初来日し、19日にはスペースFS汐留にて開催された完成披露試写会及び記者会見に出席した。頼れる兄貴ピュアなあどけなさを感じさせる弟といった印象の二人は、時にはじゃれあうようなそぶりを交えながら絶妙なコンビぶりを発揮し、終始和やかなムードに包まれた会見となった。また、当日はドイツ人と日本人のハーフでFM放送のDJとして活躍中のトムセン陽子さんが、二人に花束を贈呈した。

 ハンス監督にとって、本作は『ホワイトノイズ』(未)に続く二本目の長篇映画。本作のメッセージはとの質問に、「実は具体的なメッセージはないんだ。ただ若い人は通常社会を変革していきたいと考えているはずなのに、今現在はそうした熱意が埋もれていると思う。それをこの映画で揺り動かしたかったんだ。この映画を見た人から、今のままではいけないという思い、エネルギーが湧き起こればいいんじゃないかってね。あとは、二股をかけている女性に対して、必ずしも一人に絞る必要はないんだよってことかな(笑)」と、ウィットを交えながら答えた。
 本作では、ベルリンでの都市生活を描いた前半から一転、後半ではチロルの山中の自然の中での描写を鮮やかに対比させて描いている。それは、自身もチロルの山で育ったハンス監督の、自然に対する思いがこめられものだ。「人は自然から大きな影響を受ける。そうでなければ映画の中にあの山のシーンは入れなかったよ。ベルリンからチロルまでは実際は1000キロくらい離れており、誘拐した者を車に乗せてその距離を走らせるのはおかしなこと。でも山に行くと人は日常の問題が如何に小さなことかが判るよね。映画の後半では、前半に起したことがどうだったかをチェックしていくので、その余地を与えるために山のシーンは入れたのさ」

 『グッバイ、レーニン!』の好演で、日本でも多くのファンのハートを掴んだダニエルは、本作を筆頭に『ラヴェンダーの咲く庭で』、『青い刺』と3本の主演作が公開待機中。ハンス監督とのコラボレーションは、『ホワイトノイズ』(未)に続き本作が二度目だ。今回ナイーブでピュアな青年、ヤンを演じたダニエルは、「一番難しかったのは後半の山でのシーンですね。ストーリー的にも様々な要素がつまっていて、恋する男の役とその一方で親友を裏切る男の役を演じなければならない。さらに、ハーデンベルグを誘拐してしまったことで追い詰められた恐怖心も出さなければならない。そして、最終的には芝の上で泣きだしてしまうところに如何に自然に持っていくかが難しかったです。
 今回ヤン役を演じて、他の世代で起きたことが勉強できて良かったと思います。自分達にとって68年のドイツ革命遠い過去のことで、同世代の多くの者には、ほとんど痕跡を残していない出来事です。それを自分自身も社会に敏くならねばとニュースを入れ、監督から当時のことを記した本をもらいました。またハーデンベルク役を演じたブルクハルト・クラウスナーは、68年の学生運動を実際に過した闘士で、撮影中に彼から様々な実体験を聞けたことも本当に勉強になりましたね」と、得難い経験となった今回の役と現場についてを語った。

 なお、『ベルリン、僕らの革命』は、2005年4月下旬よりBunkamuraル・シネマにてロードショー公開。
(殿井君人)

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ベルリン、僕らの革命
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ベルリン、僕らの革命