一卵性双生児でありながら片や溺愛され、片や虐待を受ける姉妹。密閉されたコンクリートの部屋で殺人鬼の魔手にさらされる姉弟。製作者を看取るために作られた少女アンドロイド。父が見えない母と、母が見えない父との間での僕の生活。そして男の元に毎日届けられる殺害した恋人の腐りゆく死体の写真…。人気作家乙一の同名短編集『ZOO』に収録された5つの奇妙で衝撃的な短編を、映画、TV、CM、ゲームなど様々なフィールドで活躍する5人の監督が映像化したオムニバス作品『ZOO』がこのほど完成。2月24日、スペースFS汐留にて完成披露試写会が開催された。当日の上映前には、各エピソードの監督・キャスト総勢12名が舞台挨拶を行い、完成作への意気込みや撮影時のエピソード等を披露した。

『カザリとヨーコ』
小林涼子——ぱっとみてどちらの子か判るように演じるのが難しくて悩みました。姿勢や声を少しずつ変えようと努力してみたので、そこを見て欲しいです。
金田龍監督——去年から今年にかけて、児童相談所に虐待が報告されるケースが2倍になっているそうです。そういう痛ましい状況が社会で起きているということが、この作品のテーマとして入ってますので見ていただければなと思います。

『SEVEN ROOMS』
市川由衣——私は弟役の須賀健太君としかからみがなかったんですが、健太君との姉弟の雰囲気がすごく大事な作品だったので、それを出すのが大変だったです。私は3人兄弟の末っ子だったので、姉役ができるか心配だったんですが、リハーサルの時点で二人きり同じ部屋で互いに質問をしあったりしたことで、本当の兄弟の雰囲気を出せたかなと思います。
須賀健太——いろいろ初めてのことが多くすごく楽しくて、自分はお姉ちゃんがいないんですけど、お姉ちゃんといるとこんな気分になれるんだなって判ってよかったです。ちょっと初めの方は恐いんですけど、後半は泣けて感動できるようなところがいっぱいです。
安達正軌監督——姉弟の話なので、その感じがよく出せ、感動できればなと思って撮りました。短編で様々な話がある中で、今回好きな作品を選ばせてもらったのでとても幸運だったと思います。

『陽だまりの詩』
鈴木かすみ(少女役)——初めてモーションキャプチャーに挑戦して戸惑いとかも沢山ありましたが、仕上がったものを見て自分の動きがそのまま絵になっていたのに感動しました。モーションキャプチャーは何もないところで想像しながら演るのが難しかったんですが、とてもいい話なので是非見てください。
水崎淳平監督——乙一さんの原作のすごいところは、ぱっと読んでぱっと絵がうかぶところで、雰囲気とか爽やかさとかそういう再現にスタッフ一同で臨みました。話のテーマは“命あるものの定め”という重くなりそうなところを、微妙にズシンと落さずに、少し浮かして希望のある作品にできたんじゃないかと思います。鈴木さんの存在もあって、共感を持てる女の子を作れたのではないかなと思います。

『SO-far そ・ふぁー』
神木隆之介——この作品に出れてすごく嬉しくて、現場もすごく楽しかったです。現場では杏樹さんが人形をくれて、一緒に遊んでくれたりしてまて、すごく優しくていいお母さんでしたよ。映画はお母さんとお父さんとの間で揺れる、僕の気持ちを見てもらえればと思います。
鈴木杏樹——とても不思議な映画です。脚本を読んでもとても不思議な空気感がながれてましたが、出来上がったものも本当に不思議なんですよ。ご覧いただいた方は、最後に狐につままれたように感じるんじゃないかと思います。隆とは結構親子役をやらせていただいていて、もう本当に親子っていうか恋人っていうか…なんちゃって、随分ひかれちゃったかな(笑)。公私共に仲がいいので、とてもスムーズにやらせていただきました。
小宮雅哲監督——鈴木さんから不思議でボーッとして脳みそが緩そうな作品だというお話がありましたが、普段もボーッとして脳みそが緩い状態んあおでそういうのがフィルムに現れたのかなって思います。作品のテーマは両親の不在で、子供にとっての両親の存在の大きさとその影響を伝えたいと思いました。

『ZOO』
村上淳——一言でいうと不思議な映画です。脳味噌を柔らかくして全部見てもらえると、ごもっともです。監督とは5作目くらいで前作のOKラインより高くしないとOKもらえないので、はりきりましたね。ご満悦です(笑)。
安藤尋監督——見所はいろいろありますが、ずばり村上淳を見ていただければいいかなぁと。原作とはまたちょっと違った肌触りの作品になっている思いますが、素晴らしい原作から映像に換える上でインスパイアされたもう一つの『ZOO』ができたらいいなということから考えていきました。

 また本作は、若手の出演者が多く、家庭内暴力など子供に密接した社会問題をテーマにしていることから、配給収入の一部がスマトラ島地震遺児への援助としてアジア交通遺児支援協会に寄付されることになっており、2話・4話で熱演を披露した二人の子役須賀健太君、神木隆之介君から協会代表への目録贈呈式も併せて行われた。

 なお、『ZOO』は2005年3月19日よりテアトル池袋他にて全国順次ロードショー!
(殿井君人)

□作品紹介
『ZOO』
□公式頁
『ZOO』