バレンタイン・イブである13日の夜、恋人たちが愛を語るのにぴったりなこの日に、忘れることのできない究極の愛を描いた『2046』も記憶に新しい、巨匠ウォン・カーウァイを招いたバレンタイン・パーティが催された。自身の中篇「若き仕立屋の恋」が含まれるG.W.公開のエロスをテーマにしたオムニバス作品『愛の神、エロス』は、セックスと嘘とビデオテープ』で衝撃のデビューを飾り、以後ハリウッド、インディーズ問わずその独自のフィールドで躍進目覚しいスティーブン・ソダーバーグの「ペンローズの悩み」、誰もが認めるイタリア映画3大巨匠の1人、『情事』『欲望』のミケランジェロ・アントニオーニの「危険な道筋」、というこれまでにないゴージャスな3人の監督の共演が実現した。そしてその共通のテーマに、人間の愛を象徴する”エロス”が選ばれたことは、それぞれのスタイルで映画の中に愛を表現してきた3人にとって、もはや宿命であるかのようである。ゴージャスにしてスキャンダラスな香りを漂わせるこの幸福な出会いを祝福すべく、パーティーは和やかに催されたのだった。

 シックなスーツで登場したウォン・カーウァイ監督は、まず挨拶と共に、アントニオーニ監督との仕事をした感想を語った。「アントニオーニ監督と仕事が出来たことはとても光栄に思っています。アントニオーニには撮影中も精神的なサポートをしてもらったんだ。お互いに何を撮っているかわからないまま撮影をしていたが、同じテーマでも異なる視点で撮ったことがわかり、興味深かった。」また、『2046』のコン・リーの起用については、「言うまでもなく、とてもパワフルで強い女性であるが、一方で男性なら誰もが触れたいと思うプロポーションの持ち主でもあるんだ。実際、彼女と握手をしたとき、その手がとても柔らかでセクシーだったんだ。」また、『ブエノスアイレス』『2046』のチャン・ツェンについても、「この作品は少年の初恋を描いたものですが、若いときと大人になったときとの二人の面を演じきっており、素晴らしい。」と、絶賛した。

 そしてバレンタインにちなんでエロスを漂わせる日本女優として寺島しのぶさんからカーウァイ監督に、広尾の人気ショコラティエ「ミュゼ・ドゥ・ショコラ テオブロマ」特製の『愛の神、エロス』をイメージしたチョコレートがプレゼントされた。寺島しのぶさんは映画を観て、「好きです。人間の想像力はやはりエロスだと思いました。」とコメント。艶やかな着物に身を包んだ寺島さんはまさに「秘めた愛」を感じさせ、カーウァイ監督はその柔らかな立ち振る舞いに微笑を隠せない様子であった。

 印象的だったのは、「エロスとは華を咲かせる過程であり、愛という環境におかれてエロスという感情が生まれるのだ。」というカーウァイ監督の一言。ただ一度の手と手の触れ合いに思いを馳せ、高級娼婦のために服を仕立てつづける秘められた愛を描いた「若き仕立屋の恋」で、カーウァイは、触れることのできない東洋のおもはゆいエロティシズムの世界を創りだしている。

◆『愛の神、エロス』は2005年G.W.、シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマにて公開予定!

(Yuko Ozawa)