現代日本が抱える大きな社会問題の一つ、“DV”(ドメスティック・バイオレンス)を真正面から描いた社会派ドラマ『DV』が5日公開初日を向かえ、渋谷・イメージフォーラムにて舞台挨拶が行われた。会場は立ち見が出るほど混み合いを見せ、駆けつけた観客の方々は、中原俊監督、キャストの遠藤憲一さん、英由佳さん、小沢和義さんが語るエピソードに聞き入った。

 「長いこと生きてきまして、妻も子供もいますが、突然無性に暴力的になってしまう瞬間があるんですよね」と語ったのは中原監督。「こういう感情はなんだろうと。大人の男と女の話っていうのに最近ずっと興味があったので、新たな視点からできればと思って今回『DV』をやさせていただきました」。
 遠藤さんは、愛の深さゆえ妻に暴力を振るう夫役として鬼気迫る演技を披露。本人いわく「これ決して地じゃないですから! あくまでお芝居ですんで(笑)。女性に暴力なんて振るいません!」とのこと。作中で絶大な存在感を示した遠藤さんだが、「夫の昭吾が暴力を振るうのは妻を愛しているからで、それがにじみでるように演じました。でもそのバランスは難しかったですね」と役作りの苦労を語った。

 一方、映画初主演とは思えない体当たりの演技で魅せた英さんは、「(演じた泰子は)まるで正反対なタイプだと思ったんですが、意志の強さの反面、底力のある女の人だなと。そういうところは似ているかなと思います」と話し、遠藤さんとの暴力シーンでは「段取りがあるとその空気がわかってしまうということで、DVのシーンは実際に叩いたり叩かれたりしています。(これくらいの力で叩かれるんだよってことがわかればと思って)シーンの前に遠藤さんのほっぺたを叩かせてもらいました。」とエピソードを披露。それを受けて遠藤さんは、「英さんは思いっきり叩いてくれました(笑)。とにかく、段取りなくやるためには実際に頭やほっぺたを叩くこともあるわけで…。ナイーブになって落ち込んじゃう子も多いんですが、英さんはファイトのある子なんでとても助かりました」と信頼関係の上で、リアルなDVシーンが撮られたことを明かした。

また、宗方役で出演している小沢さんは脚本にも参加。「人間的になぜDVを振るうのかという点から書き上げました。原因があってケンカが起こるのと同じように、その理由に着目してただの暴力映画にならないように心がけました。あと、人間の根本になる感情表現の上手い、下手な人っていうのもあると思うし、奥底に何があるのかというのを考えたりもしましたね」と述べた。

(山本)

☆『DV ドメスティック・バイオレンス』は渋谷イメージフォーラムにて絶賛上映中!

□作品紹介
『DV』