『ヴァイブレータ』で現代を生きる女性のリアルな心情を画面に焼き付け、主演の寺島しのぶさんをはじめ数々の映画賞をもたらしたことも記憶に新しい廣木隆一監督。そして、その廣木監督が次回作として選んだのは、中性的な画風で誰にもこびない人たちのアンニュイを描き出す人気漫画家やまだないと『ラマン』の映像化である。

3人の男と少女のひそやかな1年間を描く『ラマン』は、1人の少女が17歳から18歳になる1年間に体験する男たちのとの奇妙な共同生活が綴られる。廣木監督自身、全ての女性へのオマージュであると語る本作において、17歳で絶望を感じ、蝶のタトゥーを背中に入れた少女が、かすかな希望を見出して新たな一歩を踏み出す力強さを身につけるという成長の過程が描かれている。

キャストに顔をそろえたのは、一度に見ることが惜しいとすら思える日本映画界になくてはならない名優たち、大杉漣(『不貞の季節』)、田口トモロヲ(『理髪店主のかなしみ』)、村上淳(『ヴァイブレータ』)の3名。そしてそんな彼らの相手を圧倒的な存在感で一身に受けたのは、若手実力派の安藤希。廣木監督とは縁の深い面々が揃ったとのことで撮影現場ははしゃぎまくっていたという男性陣4名(監督含む)と、ヒロインの安藤さん、そして音楽を担当した辻香織さんも飛び入り参加し、総勢5名が超満員の熱気の中初日舞台挨拶に登壇した。

廣木監督:「好きなスタッフ、キャストに恵まれて一生懸命撮影しました。楽しかったです。そういう雰囲気も楽しんでいただければと思います。そして、次回も是非このメンバーでやりたいです。」

安藤さん:「1年前の撮影だったのでこうして公開を迎えることができ、うれしいです。「廣木組はいいよ!」と聞いていたし、参加できてよかったです。」

田口さん:「中年メガネボーイズです。(村上さん、大杉さん、そして自身を指し)(笑)。監督とは何度も一緒に仕事をしていますが、ここまで、他の2人も含めてがっぷりと仕事できたのは初めてなので楽しかったです。安藤さんは、もう未知の年齢なので、ガラス細工を触るような感覚でした。映画の中では、最後に、少し通じ合えるようなものを出せればと思って演じました。」

村上さん:「(現場では、)このメンツということはアドリブ合戦か!?と思いました。今回監督は押さえた演出をしています。いい意味で期待を裏切ることができると思います。かっこいい作品です。」

大杉さん:「北九州の小倉での合宿のようなハードな撮影でしたが、たくさん飲みに行きました。監督とは助監督の時代からの長い付き合いになります。監督は人を見る姿勢、作品を作る姿勢がいつまでも変わらない。だから長く付き合っていけるんですね。『不貞の季節』のようなSMもまたやってみたいですね。」

撮影現場では、控え室も共同で、よく知る間柄の監督、俳優たちは役柄もあって(!?)おおはしゃぎの様子だったということを村上さんが暴露。特に、大杉さんのはしゃぎぶりには安藤さんも思わず線を引くほどだったとのことで、これを楽しそうに語る監督、村上さん、田口さんのとてもリラックスした表情に、廣木監督への厚い信頼を垣間見たのでした。これから作品を観る大入り満員の観客の期待を裏切らない、爆笑やまない楽しい舞台挨拶となった。切なくもエロティックな少女の成長物語、作品も必見です。

◆『ラマン』渋谷シネ・アミューズにて公開中!以降、全国順次公開。

(Yuko Ozawa)