1998年にカンヌ映画祭パルムドール賞を受賞した『永遠と一日』以来、6年ぶりとなる待望の新作『エレニの旅』を携えて、ギリシャの巨匠テオ・アンゲロプロス監督が来日し帝国ホテルにて会見を開いた。 
 構想に2年、撮影に2年を費やして完成した『エレニの旅』は、三部作の一作目。本来はひとつのシナリオであったが、それを映像化すれば10時間もかかってしまうとのプロデューサーの判断で、三部作に分けることになったという。難民としてギリシャ現代史をひたすらな愛で旅していくヒロイン・エレニの、とても叙情豊かで哀しくも美しい物語だ。
 登壇した監督は知り合いの姿を見つけて顔をほころばせ、「新作が出来る度に来日している。昔からの儀式のようだ」と笑い、ユーモアと機知に満ちた表現を交えながら、静かに、そして上品に語り、会見は和やかな空気に包まれて進んでいった。

Q:女性を主人公にしたのはなぜ?
監督:「エレニという名はシンプルに浮かび上がってきました。これは母の人生ではありませんが、20世紀初めに生まれ20世紀の終わりになくなった母に捧げた映画です」
Q:撮影に2年もかかった理由は?
監督:「冬の三ヶ月間は水がなくなる湖の底に、村を作ったんです。その村での生活の撮影後、水位があがるのを待ち、洪水のシーンを撮りました。自らの手では何も壊さなかったんです」
Q:長期間、映画を撮るためのエネルギー持続力がすごいですね。
監督:「映画は映画でなく、私の人生。やめる時は死ぬ時です。通りがかった女性を、見えなくなるまで撮り続けているようなものです」
Q:ヒロインのエレニが泣くシーンが印象的でしたが。
監督:「私が「泣くように」と要求したのは、最後の一回だけ。その他は、彼女が自然に泣き始めました。彼女の判断をそのまま映画に使いました」

 第二作目タイトルは『第三の翼』で、1953年から世紀の変わり目まで、3つの大陸・7カ国に渡ってエレニが旅をするのだという。撮影は、2005年冬から2006年冬に予定。第三作目タイトルは『今日か明日』で、時代は現代なのだそうだ。
(村松美和)

■『エレニの旅』は、4月ゴールデンウィークロードショー