韓国で若者から絶大な支持を得る一方、『魚と寝る女』『悪い男』など作品を発表するたびにそのスキャンダラスなストーリーが賛否両論を巻き起こしてきた鬼才、キム・ギドク監督。昨年は『春夏秋冬そして春』で人生を四季に見立て美しい自然をフィルムに焼き付け、世界から高い評価を受けた。そして本作『サマリア』では援助交際という社会問題を取り上げ、少女の純真さの中にある狂気を美しくも残酷な物語の中で表現し、栄えあるベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した。
 無名でも魅力ある人物をキャスティングするためにオーディションを重視するスタンスである監督が今回主演に大抜擢したのは二人の少女、父親と二人暮らしの高校生ヨジン役のクァク・チミンと、ヨジンの親友で、援助交際をしてしまうチェヨン役のハン・ヨルムである。本日その二人が来日し、渋谷セルリアン東急ホテルにて会見を開いた。

Q:初めて会った時の互いの印象は?
チミン:「脚本を読んで、チェヨンという子は背が高くて大人っぽくてセクシーというイメージがあったので、ヨルムと会った時は意外でした。でも撮影を進めるうちに、本当に役に合っていると思いました。普段から本当によく笑う女の子で、明るく、今でも仲良しです」
ヨルム:「第一印象は冷たい感じでした(笑)。私とは違って、どんな時でも冷静沈着な子です」

Q:監督からのアドバイスは?
チミン:「私は映画出演も主演も未経験でしたが、「すべて君に任せるから」と監督には言われました。何歳の頃にどんなことをしていたか?楽しかったことは?悲しかったことは?などと監督と話していくうちに、演じる上での疑問が解決されていきました」
ヨルム:「私も初めての演技でした。「自分のスタイルでやりなさい」と言ってもらいました。監督は居心地のいい現場になるよう心がけてくれていました」

Q:この映画を通して成長したことは?
チミン:「キム・ギドク監督の現場はとても大変と聞いていたので、一つ女優として乗り切れたかなと思います(笑)。この映画で、責任と自分なりの考えをもてるようになりました」
ヨルム:「内面が成長したと思います。自分で考え、自分に自身がもてるようになりました。独特で個性的で魅力的な女優になりたいと思っています」

Q:父親役のイ・オルさんとの共演はどうでしたか?
チミン:「初めは緊張しましたが、実の父と思えるほどになりました。本当に優しくて、タフだと思います。今でも会った時には「お父さん」と呼んでいます」

Q:チェヨンはいつも微笑んでいますね?どうしてでしょう?
ヨルム:「幸せだから笑っていたのではないと思います。今を生きる大人たちへの警告なのではないでしょうか。援助交際は確かに良くないことですが、それに至ってしまう過程を考えることが必要だと思います」

Q:目標としている俳優、共演したい俳優は?
チミン:「『大統領の理髪師』のムン・ソリさん。いつも自分の殻を打ち破っていると思います。共演したいのはヤン・ドングン、ソン・ガンホさん」
ヨルム:「個性的なチョン・ドヨンさん。好きな人たちから少しずつ魅力を取り入れていきたいです」

 とても可愛らしく初々しい二人。チミンさんからはクールで聡明な印象、ヨルムさんからは快活で自由な印象を受けた。新人ながらキム・ギドクの世界を見事に体現した彼女たちの演技に注目!
(村松美和)

■『サマリア』は2005年陽春、恵比寿ガーデンシネマにて公開

□作品紹介
『サマリア』