わずか15年で158本の出演作を残し、37歳の若さで天逝、没後35年を経た今も世代を超えて人々を魅了する希代の映画スター、市川雷蔵。
雷蔵と43本もの映画で共演した(夫の勝新太郎との共演作は30本)中村玉緒を招き、市川雷蔵との思い出、そして彼の魅力をトークイベントにて語って頂いた。

「雷蔵さんとは私の兄(三代目中村鴈治郎)と友人だったという事もあり、小さい頃からの付き合いで妹のように可愛がってもらいました。私にとっても兄のような存在でしたね。私はSF映画が好きで一緒に映画を観に行く事も多かったですよ。やがて大人になり、偶然なんですが私は雷蔵さんと一緒の大映に入ったのです。将来の夫となった勝新太郎もそうです。(雷蔵さんと勝さんは『花の白虎隊』で同時デビューを果たした。)その頃になっても相変わらず一緒に映画を観に行っていたのですが、雷蔵さんは全然周りに気付かれないのに対し私はどこにいてもすぐにバレてしまうので、「もう、あんたと行くの嫌や!」と言われた事もありましたね。(笑)なんかそういった日常的な事も走馬灯のように思い出しますねぇ。雷蔵さんと私は中が良すぎて結婚するんじゃないかと言うウワサもたった事がありますが後に私は勝新太郎という男を好きになり結婚したというわけです。(笑)
 この後に上映される『大菩薩峠』という作品は私がそれまで色々な作品に出演したしましたが、なかなかうまくいかず女優人生もここまでかな、と思っていたときに出会った作品です。雷蔵さんとも共演したこの大作に恵まれて賞も沢山頂きました。でも、私が何回もミスしてしまった時に最後まで付き合ってくれたのが雷蔵さんでした。雷蔵さんの魅力は色気です。もちろんお芝居も上手ですけど何より男の色気立ちまわり、声が素敵なのです。夫の勝も言っておりました。「雷ちゃんの立ちまわりはきれいだ。」と。勝にとっても雷蔵さんは良きライバルであり友人でもあったのです。そして、今世代を超えて沢山の方たちが作品を観てくださっているという事実は雷蔵さんもとても喜んでいると思います。」

トーク終了後、「話している間ずっと雷蔵さんが側にいてくれていた気がしました。私は本当に市川雷蔵という人間が大好きでした。夫の勝も生きていれば同じ事を思ったはずです。それは今も変わりません。」そう語った玉緒さんの瞳は少女のようにキラキラと輝いていた。
(菅野奈緒美)