カンヌ国際映画祭のある視点部門において新人監督賞(カメラドール賞)を受賞し、また記念すべき第1回東京フィルメックスにて上映されてその鮮烈な印象を残した「ジョメー」のハッサン・イェクタパナー監督。彼が2作目となるアフガン移民の問題を扱った「終らない物語」をたずさえて第5回東京フィルメックスに凱旋来日を果たした。

イランから出て行こうとする人々とこれをドキュメンタリーにおさめようとする若い監督とカメラマンとのやりとりを描く本作。緊張感漂う道程を、生々しいエピソードと同時に、人間らしいユーモアを合わせて盛り込んだロードムービーであり、乾いた土地で人々の熱意が浮かび上がる快作となった。

上映後のティーチインにハッサン・イェクタパナー監督が登壇し、観客からのイラン映画の現状についてなどの質問にこたえた。

Q:難民をテーマにした作品を撮った経緯、その背景を教えて下さい。

A:一人一人の人間が持つ、国境を越えて逃げていかなければいけない問題について撮りたかったのです。本来であれば、難民としてではなく、移民として、知恵を交換しながら移動するような難民生活であればいいなと思います。残念ながら、現在は経済的、政治的理由から移民する人々が増えているのです。個人的には同じ旗の下で平和に暮らせればいいなと思います。

Q:この作品についての撮影許可、公開許可などはおりたのでしょうか?

A:撮影許可はおりました。できるだけ冗談を交えながらやわらかく表現したのでお役所としても問題なかったのではないでしょうか?

Q:キアロスタミ監督のクレジットがありましたが、実際にどのように作品に関わっているのでしょうか?

A:彼は、この作品について相談した時に作らないほうがいいのでは?というアドバイスをくれました。もう少し商業的な作品を作ればどうだ?というアドバイスをくれたのは、彼と同じような道を歩ませたくなかったから言ったのだと思います。

「山岳地の撮影は近所の山で撮ったが、近所の人にみせた時も幸い気がつかなかったみたいだ。」という微笑ましい撮影秘話からもわかるように、機知とユーモアにあふれた監督のコメントがまた質問を呼び、最後まで手を挙げる人が絶えない活発なティーチインとなった。前作「ジョメー」を観たファンも多く詰め掛けた会場は、“ハッサン監督=東京フィルメックスにはなくてはならない監督”なのだと思わせる、暖かい雰囲気を漂わせていたのだった。

◆明日11月24日18:10−18:50に朝日ホール下(11F)のスクエア会場にて、「中東映画のいま〜ニュースでは伝えられていない映画事情」にショーメ監督も登場します。こちらも要チェック!

(Yuko Ozawa)