今まで上映される機会の少なかった、作家性にあふれる作品群を紹介する貴重な場として独自の地位を築いている映画祭、東京フィルメックス。本日、その5周年の契機となる今年のオープニングセレモニーが有楽町朝日ホールにて開催され、セレモニー後にはオープニング作品となる話題作「カナリア」の舞台挨拶が行われた。

セレモニーはディレクターの林加奈子氏による開会宣言に続いて、プログラム・ディレクターの市山尚三氏からコンペティション部門の審査員が紹介され、中から審査委員長のドナルド・リチー氏による挨拶が行われた。本年の特色はリチー氏の挨拶のなかでも触れられたように「アジアの中でも中国、タイ、イラン、インド、日本、韓国、イスラエルというように国際性豊かなラインナップがそろっている。」という点である。「風を吹かせよう」という作品はインドからの初の出品となることをはじめ、今までにも増して充実の作品が集まってきている様子を伺わせ、観客の期待高まるオープニングセレモニーとなった。

 そして続いていよいよオープニング作品であり特別招待作品である塩田明彦監督最新作「カナリア」の舞台挨拶が行われた。記憶にまだ新しいカルト教団の子供たちのその後を描いている本作は公開前から数々のマスコミで取り上げられており、来年3月の公開を前にいち早く観ることができるとあって、会場は大入り満員の熱気に包まれた。

主演の石田法嗣さん、谷村美月さん、塩田監督、西島秀俊さん、甲田益也子さん、そして68年ぶりの映画出演となり作中非常に印象的な演技を見せた井上雪子さんが登壇した。

舞台挨拶では、主人公の少年を危うい魅力でみずみずしく演じている石田さんが「映画の出演は今回が初めてだったんです。」と緊張気味に語ると、主人公と旅を共にする少女を母性をも感じさせる体当たりの演技で演じた谷村さんは「どのシーンも精一杯演じたので悔いはありません。」と、こちらも初々しく挨拶をした。
出演作の絶えない西島さんは「すごく集中度の高い撮影現場で、この作品に参加できてよかったです。」と語り、また甲田さんも「息子の母親役をやるのは夢でした。監督には演技に満足していただけたみたいでよかったです。」と作品への自信、そして充実感を覗かせていた。

そして最後に、1930年代に美少女スターとして活躍し今回68年ぶりの映画出演となった井上さんが車椅子で登場し「この作品にこの年になって出ることができて幸せです。みなさんとお会いできたことも幸せです。」と挨拶し、また撮影では「久しぶりなのにぜんぜん緊張しなくて・・。演技じゃないみたいでした。」と語ると、その変わらない美しさ、おっとりとした語り口に緊張気味の出演者や会場は、和やかなムードに包まれたのだった。

塩田監督は「このような機会をいただくことができ光栄です。」とだけコメントし、残りは上映後のティーチインに持ち越された。

◆衝撃の話題作、「カナリア」は2005年3月にアミューズCQN、新宿武蔵野館にて公開決定!

(Yuko Ozawa)