市川雷蔵——わずか15年の俳優人生で、実に158本の出演作を残し、37歳の若さで夭逝した不世出の映画スター。没後35年経った今でも、多くの人々を魅了して止まない希代の存在である。デビュー50周年を迎える本年、待望の市川雷蔵映画祭が公開決定!『市川雷蔵祭 艶麗』と銘打ち、「和」「艶やかさ」といった本来の魅力に焦点をあて、多数ニュー・プリントで上映するほか、人気作・定番作をラインナップ。また、巨匠・溝口健二監督と組み、役者・市川雷蔵の出世作となった『新・平家物語』が日本初となるデジタル・リマスター版での上映も決定!
デジタル復元は、東京国立近代美術館フィルムセンターが、角川映画(大映の権利伝承会社)と共同で行うこととなった。日本では、35mmフィルムを最終形態とするカラー長篇のデジタル復元は初のケースである。
本日は市川雷蔵とゆかりのあるお二方のゲスト、水谷八重子氏と小川眞由美氏が登壇し、市川雷蔵という男について語って頂いた。

水谷:(雷蔵さんと勝新さんは日本映画黄金期支える2大柱だった)「雷蔵さんと勝ちゃん(勝新太郎)とでは、いつも雷蔵さんが優等生らしくしているのを見て勝ちゃんは悔しがっていました。一度あいつを崩したい!と。でも、お酒飲んでも全く雷蔵さんは大丈夫なのです。逆に勝ちゃんがダウンしてしまったりして。(笑)でも、優等生らしいくせして、やんちゃな所もすごく持っていて、撮影中“この人は大丈夫かな?”という人を狙って刀でバッシーン!とやるんですよ。こっちが大丈夫かと心配になっちゃう。でも、雷蔵さん上手いから切られ役の人もやりやすかったみたいでしたね。」

小川:「雷蔵さんは普段は郵便局か銀行とかのおじさん、みたいな感じだけどメイク室から出てカメラの前に立つと全くの別人になっているんです。きっと普段は姿を消していたんでしょうね。水谷さんも言っていたが、雷蔵さんはユーモアのセンスもありましたね。頭も切れるし、遅い撮影でも絶対皆を笑わせて帰るんです。
最初、雷蔵さんを拝見したのは私がまだ少女時代のことです。歌舞伎を観に行きましたら月の光がそこを射しているような…月下美人という佇まいで立っていたのがあの方でした。少女だった私はドキドキして身動きが出来なくなってしまったのを今でも覚えています。
雷蔵さんは言っておりました。「同じ人間なんていない。同じ生活なんてない。人は皆違う。」と。153人の男性を演じた雷蔵さんがそれを物語っています。彼は、役者のバイブルです。」

市川雷蔵。彼は今でも銀幕、そして我々の心の中でずっと生きている。

「市川雷蔵祭」日本映画史上初となる『新・平家物語』デジタル・リマスター版上
映を含む、全41作品を連続上映!
11月27日〜12月24日までシネスイッチ銀座にて公開。
彼を知らないあなたも、伝説の貴公子・市川雷蔵がスクリーンに甦るその瞬間に居合わしてみてはいかがだろう。雷蔵の美しさに凛とした生き方を学べるであろう。
(菅野奈緒美)