ポスト・ウォン・カーウァイ世代としてその頭角を現している香港映画界の新星、パン・チョーホン監督。TIFF2004アジアの風部門では「香港新人類〜パン・チョーホン」と題し、インディーズ時代の短編から最新作までを上映。パン・チョーホン作品の公開は日本では今回が初めて。香港の一番旬な彼の作品世界を発見することができる貴重な機会。
 ヌード写真を介して、昔の恋人と現在の恋人、二人の女性の間に芽生えた友情、そして当の男性、という男女3人の姿を描く最新作「ビヨンド・アワ・ケン」。会見には、パン・チョーホン監督に加え、主人公3人をフレッシュに演じたジリアン・チョン、タオ・ホン、ダニエル・ウーの主演の3名が登壇し会場は華やかなムードに包まれた。

 本作でラブストーリーに初めて挑戦したというチョーホン監督は、作品についてこう語る。「複雑な錯綜したストーリー。真実味を出すために役者の3人にはストーリーの展開を明かしませんでした。そのほうがより演技に真実味が増すからです。素晴らしい3人の役者と一緒に仕事を出来てうれしい。ヌード写真を取り返そうとすることを発端とするこのストーリーのアイデアは台湾留学中に実際に私が友人からきいたエピソードです。当時その話を聞いたときからずっと映画にしたいと思っていました。」
ユニークな風貌、コメントから監督が持っている新世代の風を感じることができる。また、この新鋭監督との仕事について、3人のキャストはどう感じているのだろうか。

ジリアン・チョン「あまりラブストーリーを演じた経験がなかったので面白かったです。撮影中もどういう風に展開しているのか知らされないのですごく新鮮でした今まで私はアクションものとか少し変わった役が多かった。今回は役どころも違うし、撮影も違っていました。演じながら実際にこういう経験をする女の子も結構多いんだろうなと思いながら演じました。監督をはじめ他の役者さんたちとのなかで、たくさん学ぶところがありました。。」

タオ・ホン「この映画では、たくさん新しいことがありました。私も香港の監督とははじめて仕事をしました。パン監督は考えをすごくしっかりもっている。あと撮影前からみんなとよくコミュニケーションとっていました。撮影前から私たちに何度かメールをくれて、私たちを花にたとえていました。そのメールの言葉は今思えは後になって暗示となって、演じる上で重要な手がかりになりました。こういう形での演技指導ははじめてです。彼と一緒の仕事は楽しかったです。また、出演者が3人なので今までとは違うと思ったことがたくさんありました。撮影中は、大学時代で小さな作品をみんなでわいわい言いながら演習していたときの様子に似ていると思いました。リラックスして楽しくできました、。ドキュメンタリーぽく、展開を何も知らないで演じることも楽しかったです。」

ダニエル・ウー「今まで監督とお話しする前から、『ユー・シュート、アイ・シュート』や『大丈夫』をみていつか一緒にお仕事したいと思っていました。香港には彼のような監督はないタイプ。今回の監督との仕事はずっと待ってたチャンスです。監督とは自分とセンスや考え方が似ていてすごくいい機会に恵まれたと思っています。また、出演を決めたもうひとつの理由は、私はこれまでの映画では白馬の王子様みたいな役どころを演じてきたが一般の男性はそう完璧ではないし、自分でもちょっと飽きてきたところでした。もっと違う一面をもった男性を演じたいと思っていたところ、この作品の話がきて出演を決めました。インディーズムービーだったので、撮影日数も短く、ちょっと「美少年の恋」を撮影した時と状況が似ていて、はじめて撮影したときのことを思い出したりもしました。大がかりな映画と比べて今回は親近感がもてて、入り込める作品でした。」

彼らの発言からは、パン・チョーホンがいかに慕われそしていかに友人として厚い信頼を得ているのかがうかがえる。スタッフキャストと一緒に楽しみ、そして映画人として魅了するパン・チョーホン。韓国映画勢に圧されがちな香港映画界に登場したこの新たな才能は今後アジアの映画界をもにぎわせてくれそうだ。香港新人類パン・チョーホンに気をつけろ!
(綿野)

□東京国際映画祭
http://www.tiff-jp.net/index_j.html