韓国で製作費13億円、5年の歳月をかけて製作された純愛アニメーション『ワンダフルデイズ』。そのクオリティの高さを韓国の映像見本市で一目見て魅了されたプロデューサー・武田康廣と日本語版演出・脚本の山賀博之は、日本での配給を自ら行う事にした。また単に韓国の上質なアニメを配給するだけでなく、日本語吹き替え版を製作し劇場公開するという挑戦は、多くのアグレッシブな作品を世に送り出してきたガイナックスらしいと言える。
—-【ガイナックスとは】自主映画制作グループDAICONFILMを発足。特撮、アニメ、ヒーロー物など様々な映像を立て続けに制作し話題を呼んだスタッフ達がさらにスタッフを充実させプロとして本格的な劇場用アニメーションを制作する事を企図し、その為のスタジオを立ち上げた。それがガイナックスの誕生である。

本日、その『ワンダフルデイズ』の会見で登壇したのは、ガイナックスプロデューサー・武田康廣氏、日本語版演出・脚本の山賀博之、韓国版(オリジナル)監督のキム・ムンセン氏、韓国版音楽担当のウォン・イル氏、日本語版声優陣の山寺宏一氏、真田アサミ氏、パク・トンハ氏、横堀悦夫氏の以上8名。以下一言ずつコメントを頂いたので紹介しよう。

武田:「韓国のアニメイベントでこの『ワンダフルデイズ』オリジナル版を観て固まってしまいました。韓国アニメ、すごい事やっているなと。これ実写使っているのか?って思うくらい映像もきれいで衝撃でした。日本でまだ上映予定無いとの話を聞き、ぜひ我々(ガイナックス)でやりたいと思ったのです。」

山賀:「日本語版製作に当たり、ローカライズがきちんと出来ているのがアニメの良さだと思います。日本のアニメーションが海外に輸出されたとき、たいていは向こうの言葉で吹き替えされているので、日本作品とは思わず、自分達の国の作品だと思うんです。そもそも、僕はこれを韓流アニメだと思っていないというか、韓流アニメで売っていこうとは思わないんです。ひとつの作品として、出来るだけ日本の人にもよさが伝わるようにしたい。それが、日本語版に吹き替えするという形でした。」

キム:「素晴らしい日本語版『ワンダフルデイズ』を完成させてくれたスタッフ及び声優陣の方達に感謝します。本作のテーマは私たちが望んでいるユートピア、それは一体どこにあるのか?と言う事です。」

その後、会場では普段は絶対に観る事の出来ない本作のメイキングを収めた映像が流された。製作過程の様子、アニメーションの中で使ったという製作途中のミニチュアなども映された。ミニチュアについて韓国オリジナル版のキム監督はこう述べた。「CGで作ってもいい所はあったがミニチュアにこだわった理由は、アメリカ、日本と違う事がしたいと思ったからです。ミニチュアならではの重みや重量感出したかったためです。とにかく、アニメーションが生きているように作りたかったのです。」 
このミニチュア作りには1日24時間以上、それでも足りず円形脱毛症にまでなったというから大変な苦労が伺える。ミニチュア作りだけでなんと11カ月も費やし、その後4カ月かけて作ったというのだ。スタッフ皆が汗水たらし、愛情込めて作ったこのミニチュアは撮影終えた現在、韓国のシネマコンプレックスという韓国の映画スタジオで大切に展示されているそう。
ガイナックスプロデューサーの武田氏も、「ソウルから2時間もかかるけど一般の方も入れるし良かったら行ってみて下さい。きっと『ワンダフルデイズ』の世界観が楽しめると思います。」とのこと。

そして2005年は日韓国交正常化40周年にあたり〈日韓友情年2005〉と名付けられている。今後ますます日韓交流が盛んになる中、このような新しい形の日本と韓国のアニメの交流は話題になることだろう。そして、『ワンダフルデイズ』を観ると、人を愛する心、まばゆい青い空への憧憬は、国境を越えても変わらないことに気づかされることを願ってやまない。
そんなガイナックス20周年記念作品 純愛アニメーション『ワンダフルデイズ』は2005年春公開予定!
(菅野奈緒美)

□作品紹介
『ワンダフルデイズ』
□東京国際映画祭
http://www.tiff-jp.net/index_j.html