東京国際映画祭2004:コンペティション部門:『ココシリ:マウンテン・パトロール』記者会見
中国青海省のチベット高原や崑崙三脈に囲まれた、動物の楽園ココシリ。そこに生息するチベットカモシカの毛は「カシミアの王」とされ、密漁が急増。カモシカを守るため、民間の有志が集まって、93年に<マウンテン・パトロール>が組織された。彼らと自然、彼らと密猟者、密猟者と自然、三つ巴の攻防の真実を基に描いた『ココシリ:マウンテン・パトロール』。ルー・チューアン監督とパトロール隊のリーダーを演じたドゥオ・ブジエさんが会見の席に登場した。
中国での公開時、本作は改めて中国における貧富の差を人々につきつけ、寄付のために1万人が署名したという。「作った甲斐がありました。“生きていくということ、誠実な生き方、生きる希望とは”ということを考えて欲しいです」と述べる監督。
Q:撮影において、どこに一番難しさを感じましたか?また、ここだけは慎重に撮りたいと思ったところは?
監督:「ココシリはおそらく原始の自然が残る中国最後の場所で、全く無人の世界です。劣悪な環境を克服することが、一番大変でした。5〜6年前、初代と2代目のリーダーが命を落としています。なぜそこまでして彼らはパトロールをしたのか、物質的な援助もないのに続けていく理由が、私は理解できなかったんです。この映画を撮る過程が、その答えを見つけるための過程だったと思います。こだわったのは、それが起こった場所で撮る、ということでした。」
Q:エピソードは、どの程度まで真実?
監督:「ほとんどは、実際に起こったことです。、もちろん創作した部分もあって、それは流砂のシーンです。私はココシリで、いかに人間の命が脆いかを感じました。一瞬のすれ違いで、命を落とす危険があるんです。抵抗のしようのない、その絶望を表現したかったので加えました」
Q:同じチベット族として、マウンテン・パトロールのことを理解できましたか?
ブジエさん:「チベット族は、自然や動物を愛することに無目的な民族です。「自然を大切にしましょう」などと言葉で教えられたことはありません。当然のことなんです。彼らがそれらを守るために闘ったということに、とても感動しました。役に入ることも簡単でした」
Q:TIFFでの上映を観て、どう思いましたか?
ブジエさん:「感動して泣きたくなりましたね。人間の欲にはきりがないと思います。一方では自然を守るために死んでしまう者もいれば、一方では破壊し続ける物もいる。自然と共に生きようとする人が増えてほしいですね」
□作品紹介
『ココシリ:マウンテン・パトロール(原題)』
□東京国際映画祭
http://www.tiff-jp.net/index_j.html