厳しくも美しい自然が広がる北海道を舞台に、絵を描くことが大好きで真っ直ぐな心をもつ心平と耳が聴こえない小百合の初恋を描いた感動作『雨鱒の川』。キャストに玉木宏、綾瀬はるか、中谷美紀、安部寛、柄本明、星由里子などを迎え、『解夏』の大ヒットが記憶に新しい磯村一路がメガホンをとった。原作は、川上健一の同名小説である。

 本日、丸ビルホールにて催された試写会の際、舞台挨拶が行われた。登壇したのは、本作が映画初主演となる玉木宏(心平役)、綾瀬はるか(小百合役)、中谷美紀(心平の母親役)、須賀健太(8歳の心平役)、そして磯村一路監督。ゲストらが姿を見せると会場内から「キャー!」「きれい!」「かっこいい!」「かわいい!」などの大きな歓声があがり、一気に場が盛り上がる。
 「北海道の自然の力は大きかったですね。日本でしか撮れない映画だと思います。構えないで、ゆっくりじっくり観て頂きたいです」とお客さんにメッセージを贈る玉木。役作りのため聾学校へ行ったという綾瀬は「耳が不自由でも、感情の伝え方は一緒だと思いました。幼い頃から想い合っていた二人の想いがどう実っていくかを観てください」と述べる。二人の共演について訊かれ、玉木が「おしとやかな人だと思っていたんですが、いい意味ですぐ覆されましたね」と答えると、綾瀬が「ラジオ収録の時もね(笑)」と言い、「そうそう、監督と3人でラジオ出演した時も、笑ってしまって話せなかったくらいです。一人が笑い出すと止まらないんですよ」と、現場の雰囲気の良さが伝わってくるようなエピソードを聞かせてくれた。
 また、母親役に初挑戦となった中谷は「初のおかあさん役と、日本一の天才子役(笑)。恋人のように演じてました。ね?健太」と、隣の須賀にふんわりと優しい笑顔を向ける。須賀は「(中谷は)優しくて、ほんとのおかあさんが二人いるみたいでした」と、照れた顔で感想を述べる。「ほんとのおかあさんと合体したらいいのにと思った」との発言に、ゲストもお客さんも思わず笑ってしまった場面も。
 最後に監督の、「川ではほとんど圏外で、携帯電話も使えませんでした。でも、ありのままの自然を撮りたかったんです。そんな自然を観てください。また、この映画で、少し明るい気持ちになれるかなと思います。観終わった後、誰かと語って楽しんで頂きたい」との言葉で締めくくられた。

 ロケハンに同行したという事実からも感じ取れる、中谷の思い入れ。台風でセットが流され、途中で違う川で撮影を行った苦難続きのロケ。須賀の、寒さに耐えての川での撮影における頑張り。葉加瀬太郎氏プロデュースの、どこか切なげながらも温かく透明度の高い旋律。挙げればきりが無いくらいの様々な要素から完成した、優しい想いが詰まった物語。素敵な映画が、また一つ誕生した。
(村松美和)

『雨鱒の川』は、11月13日よりアミューズCQNほか全国順次ロードショー!