直木賞作家であり水木しげる以来の妖怪作家でもある京極夏彦。彼の作品の中でももっとも映像化が難しく、その反面もっとも映画化が期待されてきた『姑獲鳥の夏』が、なんと実相寺昭雄監督によって映画化される。「ウルトラQ」をはじめ「ウルトラマン」シリーズや前衛的な作風で知られる実相寺監督であるが、江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』や『D坂の殺人事件』の映画化などおどろおどろしく艶かしい世界を撮らせたらピカイチの監督であり、まさにこの作品うってつけの監督だ。原作は主人公の京極堂こと中禅寺秋彦を中心とした“京極堂”シリーズとして現在9作品が刊行されており、作家・京極夏彦のデビュー作にあたる第一作がこの作品。幽霊やおどろおどろしい出来事を扱いながらもそれを主人公の京極堂が科学的解釈で解決していくのが筋になっているが、その博覧強記でぺダントリーな語り口がストーリーの展開にも大きく影響するため、映像化は難しいとされてきた。役者はきっとものすごい量の長台詞を消化しなければならないことが予想される。
さて、その気になるキャスト陣をご紹介。まず、主演の京極堂に堤真一、友人で作家、作品内ではワトソンのような役割を演じる関口巽役に永瀬正敏、スマートだが多分にエキセントリックな私立探偵・榎木津礼二郎役に阿部寛、熱血漢で江戸っ子な刑事・木場修太郎役に宮迫博之、京極堂の妹・中禅寺敦子役に田中麗奈。以上が原作となっている京極堂シリーズの主要メンバー。それに加えて、大きなお腹を抱えながら妊娠20ヶ月の妊婦、というこの作品最大の謎を提示する存在・久遠寺涼子、梗子役を二役演じる原田知世、彼女の母親・久遠寺菊乃役にいしだあゆみ、という豪華かつキャラクターに原作のイメージぴったりのキャスティングに期待が高まる。そして監督は実相寺昭雄、とくればファンにとっては充分期待していいような気がする。製作発表には映画の衣裳を身に付けた主要キャストが一同に会し、作品で時代設定されている昭和の匂いをぷんぷんさせながら、映画についてのいきごみを語った。

 実相寺監督「作品は現在撮影に入っています。京極堂と榎木津、木場という3人の探偵と1人のワトソンが登場します。僕はこの映画はすごくアナログ的に古い映画のよさを出していきたいと思っています。また今回のような若い俳優さんたちとの仕事も珍しいことなので、自分としても新しいものが作れると思います。」

堤真一「撮影では今説明セリフの応酬です。自分でもよく理解できない難しいセリフが多いんです。監督にもうついていく気持ちで頑張っております。僕はこの原作は人気シリーズだって知らなくて色んな人から「絶対バッシングされるぞ!」て言われましたけど、もう覚悟しています。あえてファンを意識しないで自分なりに京極堂を演じていきます。」
永瀬正敏「僕も同じ気持ちです。ファンの方どうか温かく見守ってください。」

阿部寛「個性的な役だけどあまりやりすぎないようにしたいと思います(笑)。昨夜徹夜で原作を読みました、自分の中ですごく「キタ!」って思いましたね。原作どおりというよりも、さらにそれ以上のものにしたいと思います。」

宮迫博之「一生懸命やることしかできないです。僕は関西人なので普段ドラマで標準語をしゃべるのはまだできるんですが、木場修は江戸っ子なのでかなりがんばって練習しています。ぼくの顔面はゲタじゃないのでカランコロン音は鳴りませんので!」

原田知世「役については今模索中です。自分なりに丁寧に演じていきたい。難しい役ですが、逆に楽しんで参加できればとも思います。ミステリー初めてなんですよ。」

いしだあゆみ「私は知世ちゃんとはちがって、重た〜く、暗〜く、じとーっと画面の隅に映っていようかなって思ってます。怖い映画にはあまり縁がなかったので楽しみなんです。心から演じることができる機会が減っているので、今回は思いっきり演技をしたいですね。飛んでみたいと思います。」
(綿野)

☆2005年、渋谷東急他松竹東急系にて全国ロードショー!

□作品紹介
姑獲鳥の夏