渋谷イメージフォーラムにて開催中の「ヤン・シュバンクマイエル映画祭2004」。最後となるトークイベント4回目のゲストは、評論家の赤塚若樹さんと翻訳家のペトル・ホリーさん。お仕事でチェコと深く関わりのあるお二人(ペトルさんはチェコの方)のお話とあって、特別にイベント時間が延長された。

 ’98年から起こった日本のチェコ・ブームに、ペトルさんは「日本に来る時、予想もしていませんでした」。シュバンクマイエル作品もこんなに紹介されているとは思っていなかったとのこと。

「ブームの中で、シュバンクマイエルは大きな役割を果たしていると思うのですが」との赤塚さんの問いに、「一番びっくりしたのは、日本はお客さんに女性が多いことです。チェコでは、シュバンクマイエル作品を見に行く女性はあんまりいないんです。シュバンクマイエルといえば、やはり特殊性があって、グロくて、考えさせられるような作品なので」とペトルさん。そこですかさず赤塚さんが「日本の女性はそういうのが好きってことですか(笑)?」と突っ込むと、「それは言いません(笑)」との苦笑いしながらのお答え。ペトルさんはシュバンクマイエルの通訳をご経験されており、「(シュバンクマイエル本人は)女性が来て嬉しいって言っていましたよ」と続けて語ると、「それは(シュバンクマイエルが)男だからじゃないですか?」と赤塚さんは更に鋭い突っ込みで返した。

 続いて『オテサーネク』のプロモーションで来日していたシュバンクマイエル氏のおもしろエピソードも飛び出した。通訳として一緒に行動していたぺトロさんいわく「浄瑠璃を見に行った時、ちょうど小泉首相が見に来ていてものすごく混雑していたんです。それをシュバンクマイエルは自分が来ているからだと思ってた(笑)」。そしてその日の出し物は、エログロい要素満載の『女殺し 油の地獄』(近松門左衛門)。「シュバンクマイエルにもってこいのお話で、ご本人の目が光ってました」。

 またペトロさんは、ご自身が翻訳した江戸川乱歩『人間椅子』をシュバンクマイエルに渡したことがあるという。するとシュバンクマイエルは「いい話だ。これをリアルにやってみたい」と答えたとのこと。「実現するかどうかはわかりませんが、日本のものに触発されて…とあると日本人としては嬉しいですよね」と赤塚さん。

 最後は入場時に配られた紙資料でちょっとした解説も。そしてシュバンクマイエル次回作の脚本の一部をペトルさんがチェコ語で朗読。言葉はわからなくてもシュバンクマイエル独特の雰囲気が存分に伝わり、駆けつけたお客さんを酔わせていた。
(山本絵美)