カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を獲得した話題作『誰も知らない』が公開初日を迎えた。シネセゾン有楽町では是枝裕和監督と柳楽優弥くんを始めとする出演者を招いた舞台挨拶が行なわれた。待ちに待った公開、そしてキャストの方々を一目見ようと、朝早くから劇場に並んだ方も多かったようだ。

 劇場にはマスコミが大勢駆けつけ、お客さんは立ち見が出るほどの大入り。そんな劇場の様子に、是枝監督は「(こんなふうに)初日を迎えられて嬉しい」と感慨深げに話した。続いて柳楽くんは今の気持ちを聞かれ、「みんなと会えて嬉しいです」。それに対し「家族と会えて?それとも観客の皆さんに?」と突っ込まれると、にがにがと照れ笑い。そんな柳楽くんが話す度に「優弥くーん!」「かっこいいー!」という掛け声が会場のあちこちから上がっていた。

 本作で柳楽くん扮する明の妹・弟を演じた北浦愛ちゃん、木村飛影くん、清水萌々子ちゃん、4人の兄妹と友達になる紗希役・韓英恵ちゃんも舞台挨拶に駆けつけ、それぞれコメント。「学校で声をかけられたけど、知らない人のふりをしました」(愛ちゃん)、「カンヌ映画祭より今日のほうが緊張しています」(萌々子ちゃん)、「今日のために静岡から来ました」(英恵ちゃん)。そして撮影現場でもムードメイカーとして活躍していた飛影くんからは「時間を設けてくれたら、特技を見せる」との提案が! 「色々ある」という技の中から、「また裂き(バレエのように股を広げる)」を披露。そんな飛影くんに場内から拍手が沸き起こったが「(いま披露した特技よりも)映画の演技の方がよい出来」とのこと。

そして「久しぶりに会って、女の子はなんだか色っぽくなってますね。」と話したのは、失踪する母親に扮したYOUさん。是枝監督から“もう一人の演出家”と称された彼女は、「この作品は脚本がなかったので、ズレていかないように意識はしていましたね。私はコントのような、誰が何を言うかわからないという状況に慣れているので…」と謙虚に語った。

『誰も知らない』は実際の事件が基となっており、是枝監督が15年間温め続けた作品でもある。長い間モチベーションを保ち続けることができた理由について「正直うまくいかない時もあって、だからといってなかったことにすることもできなかった。でも、優弥くんと会えて、主人公の男の子を好きになったので、その愛情がこの作品を作らせたんだと思います」と監督。そして柳楽くんは「僕も明みたいに強くなりたいです」と語り、満員御礼の舞台挨拶を締めくくった。
(山本絵美)