全ての女性に贈る“愛の物語”、ジュリア・ロバーツ主演『モナリザ・スマイル』は、自己実現への秘めた憧れと世間から求められることの狭間で悩む名門女子大生が、傷つきながらも自分の意志に沿って正直に生きる女性美術教師に出会い少しずつ変化を遂げていく様子が爽やかな感動を呼び起こす。その試写会が、本作品の舞台である米ウェルズリーカレッジ協定校の日本女子大学にて開かれ、現役の日本女子大生350人が招待された。

試写会に先立ち、『モナリザ・スマイル』の翻訳を担当した、女性字幕翻訳家の第一人者として名高い戸田奈津子さんの「戸田奈津子さんが語る Dreams Come True 」と題した講演が催された。会場となったのは文京区文化財第一号の築98年の講堂で、ステンドグラスが美しい小さな教会のような建築物。登壇するなり戸田さんは「とても趣きがあって、これほど適した試写会場はないですね」と嬉しそうに述べる。
戸田さんはこの作品の翻訳をした時に、非常に驚いたそう。終戦から10年ほど経った1953年という時代設定、その頃はアメリカは全てにおいて進んでいて、豊かで、女性もばりばり働いているのだと思っていた。だが、頭脳明晰な女性が集まる名門大学も、結局は花嫁学校だった。まだまだ保守的だった事実を知り、自分は間違ったイメージを持っていたという。
映画の中に「絵の先を見て」とジュリアが言う台詞がある。「どんな時代でも迷いは同じ。人生を女としてどう歩むべきか、今 人生のスタートラインにいる貴方たちに、時代性を超えたもの・普遍的なものを感じ取ってほしい」と語る。

「今は文化的な飢えがなく、選択に困るほど。私が育ったのはそんな時代ではなく、たった一つの楽しみとして映画を見つけました。すきな映画をより楽しみたいがために英語を勉強した。勉強のモチベーションとはそういうもの。すきなものに引っ張られて、知識を得るのよ」と自身の経験を話し始める。「大学4年間はあっという間で卒業を目前とした時、するなら楽しめる仕事をと思った」。しかし字幕の世界は門すら無く、壁しかなかった。10年待ち何とか中に入ることが、20年待ってやっと字幕の仕事が出来るようになった。「戸田奈津子なんていうと100年も字幕の仕事をしているように思われるけど、まだたった20年。新人ですよ」と笑う。
「夢を抱いていれば叶うのよ、なんて世の中そんな甘いものじゃありません」と語調を強める戸田さん。「夢は向こうから歩いてくるわけじゃない。自分で積極的に行って掴み取るもの。そこを間違わないで。すきなものを大切に。そこに、天から授かった才能の芽があります。自分の道を決めるのは自分。変わらない真理です」と語る。その堂々とした存在感に惹き付けられ、これから社会へ出て行こうとする女子学生たちは真剣に聞き入っていた。

ウェルズリーカレッジへ留学が決定している学生からの花束贈呈時、「がんばってね」と包み込むように優しく声をかけていた姿が印象的だった。「あまり話すのは得意でないので…」と言っていたが、非常に内容の濃い講演会となった。
(村松美和)

■8月7日よりみゆき座ほか全国一斉ロードショー
□作品紹介 『モナリザ・スマイル』