日本アカデミー賞15部門をはじめ数々の賞を受賞した『たそがれ清兵衛』から2年。藤沢周平「隠し剣鬼の爪」と「雪明かり」を大胆に脚本化した、山田洋次監督×藤沢周平原作第2弾『隠し剣鬼の爪』がついに完成した。
 山田監督、永瀬正敏さん、松たか子さん、吉岡秀隆さん、小澤征悦さん、緒形拳さん、小林稔侍さん、高島礼子さん、光本幸子さん、田畑智子さん、田中泯さんという11人の錚々たる豪華キャストによる記者会見が、東京国際フォーラムにて行われた。

 監督は、「幕末という不安な時代に、人々はどのように苦しみどのように生きる選択をしたのか。それは現代の我々と共有できるのではないか、と考えた。藤沢作品を読めば分かる“漂うもの”を、1本の糸に編むように作り上げた。『たそがれ清兵衛』とは違うテイストの色彩豊かな作品です」と挨拶。
 「外で辛いものを背負う宗蔵さんに、片桐家に帰ってきた時はリラックスしてもらえるような雰囲気でやっていけたらと思った」という松さんの言葉を受けて、「リラックスさせて頂きました。きえさんは、純粋無垢で力強い。誰でも惚れちゃうんじゃないですかね」と笑顔の永瀬さん。今回始めての侍役に挑戦するにあたり「色々な人に助けられて何とか乗り切った」という。
 高島さんは、永瀬さんがカツラではなく侍のように中剃りをしていたことに驚いたそう。「中剃りをやった人を見たのは初めてで、これが“山田組”なのかと思った。相当な集中力が必要でした」と、山田組に加わった感想を述べる。
 ふと思い出した様子で、監督が「編集者(全く現場は見ていない)が永瀬さん、松さん,吉岡さんは仲が良いのか、そういう雰囲気が出ていると言ってきた」とこぼれ話を披露。「実際に仲が良い。一緒に仕事ができる喜びが伝わるというのは、嬉しいね」と顔をほころばせる場面もあった。
 小澤さんは「辛いことの上に楽しさがある。求められる以上のものを監督に返していきたいと思った」と熱く語り、緒形さんは「守備範囲は守れたと思う。年寄りも頑張ってます」と会場の笑いを誘った。

 監督が、「スタッフとともに渾身の力を込めて作りあげた」と自信をもって世に送り出すこの作品。山田組が、再び時代もので愛・友情・憎悪をせつなく激しく表現している。特にラストシーンは、「現代のように恋愛マニュアルがない時代に生きる人々は、心の中に湧き上がる“愛しい”という思いをどんなふうに表現したんだろうか」と悩み、脚本も号外に号外を重ね、やっと辿り着いたものなのだそう。秋公開の映画の中でも、群を抜いてオススメしたい映画です。
(村松美和)

■『隠し剣鬼の爪』は、2004年10月30日より、丸の内ピカデリー2ほか全国松竹系にて公開!

□作品紹介 『隠し剣 鬼の爪』