大河内傳次郎、坂東妻三郎、水島道太郎、大友柳太郎、丹波哲郎、中村錦之助という数々の名優たちによって演じ継がれてきた隻眼隻腕のアンチ・ヒーロー“丹下左膳”。この夏その左膳を数十年ぶりに引き継ぐことになったのが豊川悦史だ。山中貞雄監督、大河内傳次郎主演による日本映画の傑作「丹下左膳余話 百万両の壺」を、劇場長編映画初監督となる津田豊滋とタッグを組んでリメイクに挑戦した。7月17日(土)の初日には、恵比寿ガーデンシネマにおいて豊川悦史、和久井映見、津田豊滋監督が舞台挨拶を行った。ちなみにこの作品は同劇場初の邦画であり、10周年記念作品となっている。
 第一回目の上映終了後、会場に現れた豊川は穴のあいたジーンズ姿。意外にも長い髪の毛が印象的だ。つづいてシックな黒のツーピース姿の和久井映見、津田豊滋監督と入場。左膳について「同性から見ても魅力的だと思います。(撮影中の苦労は?ときかれ)忘れてしまいました。すごく楽しい思い出ばかりが残っています。キャストやスタッフみんなで一ヶ月京都で撮影していてすごく思い出に残る現場でした。同じメンバーでパート2、パート3、パート4がやれたらいいな、などと珍しくそういうことを思っているくらいです。それにはこの作品がヒットしないとですね。」と続編への意欲も見せる。
 また、左膳の女房役として今までとはガラッと印象の変わるしっかり者で凛とした存在感をもつお藤を演じた和久井は、今回三味線と小唄を吹替えなしで見せてくれている。「撮影前日はもう、ホテルで泣いていました(笑)。」ともらす。「今も会場のみなさんは豊川さんにうっとりされているのがこちらからも見えています。そんな豊川さんと、そして美しいセットの中での現場は、ここちよいプレッシャーと緊張を感じながらお藤を演じていました。今となってはいい思い出です。」(和久井)。
 多数の映画に撮影助手として関わり、ようやく初監督となった津田監督は「この日がやっと来た。やっと実感しています。現場では豊川さんがあまりにかっこよくて僕の想像したイメージ以上のものに仕上がったと思います。もう、惚れながら撮っていましたね。和久井さんも、こういった着物をこんな堂々と着こなせる人ってあんまりいないんですよ。前はもっと若さがあったんですが、今は“ほんまもん”の女優として1ランク上がったところにいるのではないかと思います。」
 先月放送されたテレビ番組では、中村獅童主演で「丹下左膳」が製作され、同じく中村主演で12月には新橋演舞場での公演も決定している。今年の夏、日本に左膳ブームが起こるのか?!
(綿)

☆『丹下左膳 百万両の壺』は恵比寿ガーデンプレイスにて公開中

□作品紹介
『丹下左膳・百万両の壺』