人は誰でも叶えたい夢がある。脳腫瘍で余命わずかと宣告された10歳の少年ピートの最後の願いは、憧れの青い蝶・ブルーモルフォを自分の手で捕まえること。しかし、その蝶はカナダから遠く離れた熱帯雨林にしか生息しない。そんなピートの思いは、やがて、有名な昆虫学者アランの心を動かし、ピートの母親と共に、彼らはジャングルへと出発する。果たして、ブルーモルフォに本当に会えるのだろうか?幻の蝶を捜し求める旅で、彼らが発見した本当に大切なものとは・・・?

この、実話に基づく感動作『天国の青い蝶』のピート少年のモデルとなったダヴィッド・マランジェさんが来日し、明治学院大学にて講演会を開いた。とても謙虚な方で、「まだ若者の自分から語ることは難しいから」と司会の佐藤アヤ子教授から質問を受ける形を希望したとのこと。
自分の体験したことが映画になることに対して、「不思議な感動があります。多くのメッセージが含んでいて、全ての人に希望を感じてもらえる映画です。たくさんの方に観て頂きたい」とマランジェさん。映画の中で少年が身に着けていた「楽」と漢字でプリントされたTシャツは、昆虫学者のジョルジュ・ブロッサ—ル氏からのプレゼントだったそうで、「旅を楽しいと感じて欲しいと言われた。乗り越えることが楽しさにつながっていくんだ、全ての障害は乗り越えられるんだと思った。“希望のTシャツ”です」と述べた。
蝶探しへ行ったメキシコには、1週間滞在。「1日目と6日目にブルーモルフォを見つけることが出来た。映画の撮影現場のコスタリカを訪れた時にも、捕まえられました」と、その時のブルーモルフォの標本を披露。そして、また別の種類のブルーモルフォの標本も持って来て下さった。場内の視線が美しい蝶に注がれ、マランジェさんも笑顔を見せる。

現在22歳のマランジェさんは、旅の後から徐々に病気が快方に向かい、ほぼ完治した今では特別なことがない限り通院の必要はないという。映画では10歳の設定だが、実際には6歳の時にブルーモルフォ探しの旅に行った。「当時6歳だった自分は、実は“死”というものを理解していなかったが、少し成長してから奇跡を実感するようになった」と病気の克服について話す。「奇跡が起こった最大の理由は、蝶を見たいという夢だと思う。絶対に見つけられると信じていた。それが、満足と希望につながった。あきらめずに、まず一歩を踏み出すことが大事なんです」と優しく、そして力強く語りかけ、聴講者たちもそれに応えるように聞き入っていた。
多摩動物公園に通い詰めているというマランジェさんは、もちろん蝶のコーナーがお気に入り。「自分たちも、あのように自由に舞える状態である限り、限界まで生きることが大事だと思います」と気持ちのこもったメッセージを贈る。マランジェさんの今の夢は、『多くの蝶を放し飼いにして、人に見てもらう施設を作ること』。「それが叶ったら3番目の夢の実現へ」と、常に前進を心がける、本当にポジティブな方だ。
「今、幸せですか?」と質問した学生をまっすぐに見つめて、微笑みながら「はい、幸せです」と答える姿が非常に印象的だった。

彼の言葉の一言一言に重みを感じました。皆さん、是非この映画を観て、彼の体験からのメッセージを受け取ってください。
(村松美和)

■『天国の青い蝶』は、2004年8月、シネスイッチ銀座、関内MGAほかにてロードショー!
□作品紹介『天国の青い蝶』