ぴあフィルムフェスティバル:村上春樹原作『トニー滝谷』プレミア上映
村上春樹の短編『トニー滝谷』をイッセー尾形、宮沢りえという絶妙のキャスティングで映画化した市川準監督の最新作がぴあフィルムフェスティバル(PFF)でプレミア上映された。孤独に育った主人公が“洋服を着るために生まれてきたような”A子と出会い結婚しそして彼女を失いはじめて孤独というものを了解する姿を市川準特有の静謐なタッチで描く、トニー滝谷とその父親、またトニーの妻A子とA子の死後現れる彼女にそっくりな体型のB子という役をイッセーと宮沢がそれぞれ一人二役で演じていることも話題だ。
上映後、市川準監督をゲストに迎えてのトークイベントも開催された。村上春樹の原作映画はいくつか存在するが久々の映画化となるこの作品。主演のイッセー尾形について、「イッセーさんの芝居は好きで何度も見に行っていたので、この役はすぐイッセーさんにお願いしようと思いました。イッセーさんと桃井かおりさんの2人芝居が見事だったから実はA子役は桃井さんにお願いしようとも思っていたけど、年齢の設定とも違うしそれはあきらめました。」実際A子を演じることになった宮沢りえには、なんと市川監督みずからお願いにあがったのだとか。「脚本を読んで宮沢さんも快諾してくれました。青山の喫茶店でお会いしたのですが、オーケーしてくれたのがうれしくてその後一人で恵比寿まで歩いてしまったんですよ。」とその喜びの様子を生き生きと語ってくれた。この作品についてはほとんど市川監督自らが動き回って実現したのだという。また、音楽を担当している坂本龍一については、「彼の今まで担当した映画音楽はすべて大きなお金のかかっている作品ばかりだから自分の映画とは関係ないと思っていました(笑)。音楽については、”なくてもいいような音楽で”ということでお願いしました。」と笑って答えた。また、ラストについて小説にはない部分がいくつか付け足されているがそのことについてはかなり村上春樹と連絡しあって相談したんだとか。「僕のアイデアになかなか“うん”といっていただけなくって。村上さんに内緒で入れてしまったシーンもあります。」と心配になってしまうような裏話も披露してくれた。
また、横浜市緑区の環境事業局空き地にステージを組み、ほとんどのシーンをステージ上で撮影しているという、これまでにない演出による撮影は演者にとっても演劇に近い感覚のものだったのかもしれない。PFFでは5日にこの映画のメイキング映画『晴れた家』の上映も組まれている。こちらも合わせてみるとより『トニー滝谷』の世界観を味わうことができるのかもしれない。
(watano)
☆『トニー滝谷』は2005年お正月第二弾よりテアトル系ほかにてロードショー決定!
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