過去に決着をつけようとする擬似親子関係の初老の男と青年、未来を取り戻そうとする少女、未来しか持っていないような若造。鍵を握るのは色つきの銃弾…。渡辺謙作の監督第3作となる『ラブドガン』が、6月19日テアトル新宿で初日を迎えた。この日の劇場は、前夜から並んだ熱心なファンをはじめとする多くの観客がつめかけて、初回・二回目は共に劇場通路も立ち見の観客で溢れる大盛況。そんなファンの熱狂の中で、初回上映後、二回目上映前には、主演の永瀬正敏、宮崎あおい、新井浩文、岸部一徳そして渡辺監督が来場し、作品への思いや撮影時のエピソードを披露した。

渡辺謙作監督——今回、主演の4人には映画に拘りのある俳優さんをと思いしました。殺し屋役の3人は、殺し屋が殺し屋という職業にプライドを持つのと同じく、映画俳優としてプライドを持っているのが似ているというのがあり、また女優さんもそれに匹敵する方をという気持ちから、この4人にお願いしました。元々僕は演出が不得手で、嫌いなものですから(笑)、プロの方にお願いするとひじょうに楽なので、すごく現場では助かりました。ハリウッド映画とか、ハリウッドもどき映画のように、つるつると呑みこみやすい映画も、それはそれで面白いですが、こういう風によく噛んで咀嚼しないと呑みこめないような作品も、たまにはいいんじゃないかと思います。

永瀬正敏(葉山田且士役)——去年撮影した唯一の作品で、ここから映画に戻ってこれた感じです。現場では台本に書かれていないエピソードが日々あって、毎回現場に行くのが楽しみでした。

宮崎あおい(小諸観幸役)——男の人がすごくかっこいい映画です。撮影では、映画の中で初めてバイクに乗れたことが楽しかったです。

新井浩文(種田大志役)——自分にとって俳優をやって行く上で、転機となった作品です。撮影にまつわるエピソードは色々あって、劇中酒を飲むシーンは全て実際に飲んでいて、バーの場面は朝一の撮影で、ウォッカをストレートで七杯飲んだりとか、つけ鼻をしたままで叫ぶ場面、怒る場面が多いんですが、それが本番中に2回くらい飛んでしまい、監督から「真面目にやれ!」とか言われて、真面目にやってるのにしょうがないじゃんなんて思ったりとか(笑)。

岸部一徳(丸山定役)——僕は新井君と二人でのシーンが多かったので、彼を見てるのが楽しくてね。怖い感じなのにかわいいなとか、監督に対してむかついてるなとか反応が正直で(笑)。
インタビューの際に、この『ラブドガン』という作品を判らなかったと言う方からどうだったか?と聞かれることがありましたが、僕はすごくいい映画だと答えます。何故いい映画だったかというと、脚本があって監督がどんな演出をするのかなと思うと、判らない演出がたくさん出て来る。大体監督の考えることが判ることが多い中、この監督だけはわからない事が多く、それがすごく新鮮で、それでいてこういう映画を作りたいという方向性がはっきりしている。世の中の流れに逆らうような映画です。

 なお、『ラブドガン』は2004年6月19日より、東京:テアトル新宿、大阪:テアトル梅田他、全国順次ロードショー!なお、テアトル新宿では、6月25日の最終回上映後に岸部一徳、新井浩文、渡辺謙作監督らによるトークショーが開催される他、関連作品も併せて上映する特別オールナイトなど各種イベントが予定されている。詳細は、公式頁を参照のこと。
(宮田晴夫)

□作品紹介
ラブドガン
□公式頁
ラブドガン