『シュリ』のカン・ジェギュ監督が、ハリウッドも顔色を失うリアルなアクションに加え、突然戦場に駆り出されてしまった兄弟の愛情と葛藤を軸に朝鮮戦争の悲劇を描き、韓国では様々な記録を塗り替えた骨太な戦争ドラマ『ブラザーフッド』。待望の日本公開が10日後に迫った6月16日、カン・ジェギ監督と兄・ジンテを演じたチャン・ドンゴ、弟・ジンソクを演じたウォンビン、そして兄弟を見守る小隊の仲間ヨンマンを演じたコン・ヒョンジンの4名が来日し、ウェスティンホテル東京にて記者会見が開催された。会場には、作品に対する評価及びファンの期待度をダイレクトに反映し、多数の取材陣が集まった。

 本作のキャンペーンによる来日は4月に続き2度目になるカン・ジェギュ監督は、会見場を埋め尽くしたマスコミ陣に対し、「日本は梅雨と聞いていたが大変な上天気で、『ブラザーフッド』もこの天気のような評判になって欲しい」と、晴れやかな表情で挨拶。同じく4月に続き2度目のチャン・ドンゴンは、『ロストメモリーズ』の好演も記憶に新しい流暢な日本語で会場を沸かす。劇中よりもさらに髪を短く刈り込んだウォンビンの若々しい魅力には、会場の多勢を締めた女性取材陣から仕事を忘れて(?)の嘆息も巻き起こる。また劇中演じたキャラクター同様、人懐っこいムード・メーカーぶりを披露したコン・ヒョンジンも、その人柄が好印象。以下、会見で語られたコメントの一部を紹介しよう。

Q.ドンゴンさんとウォンビンさんに、お二人が実際の兄弟だったら、それぞれ相手をどんな兄・弟だと思うか?

チャン・ドンゴン——自分よりカッコイイ弟がいるのはいいことだと思う。ウォンビンのことは彼がデビューしてた頃から知っていたし、映画の中に留まらず撮影現場でも兄弟のように過ごしていた、実際の兄弟みたいなものだよ。彼は性格的に無口な方なので、愛嬌を振りまいてるのはむしろ年長の僕の方かもしれないけれどね(笑)。

ウォンビン——私もデビューしたての頃から存じていて、本作のような大作で大先輩と御一緒できたのは、本当に光栄でした。先輩として、兄貴分として、本当によくしてくれて、大変嬉しく思っています。心強い兄ですよ。でも、こうして愛嬌を振り向いているにも関わらず、気づいてもらえない部分もありますが(笑)。

Q.銃火器等の取扱で苦労した点は?

カン・ジェギュ監督——撮影には実際の兵器を用いたが、韓国では兵役があるので、俳優陣も比較的に適応は早かったようだ。しかし、銃自体に関しては埃による誤作動の影響などの要因も多々あったので、その取扱には非常に神経を使った。だが何よりも、一番神経を使ったのは爆破のシーンで、安全面等でスタッフ、役者陣ともに大変気を使ったんだ。

チャン・ドンゴン——私自身は、これまでも銃を扱う作品を経験してきたので、その点では然程問題はなかった。しかし監督もおっしゃったように、爆発しているすぐ傍で感情的なシーンを演じなければならない時は、演技に集中することが非常に難しかった。それらのシーンでは怪我の危険性はついて回るし、どこでいつ爆破があるかを記憶して演じなければならないからね。

ウォンビン——撮影に入る前に銃の扱いに関して充分なトレーニングを受けましたし、ジンソクはジンテほど銃を扱う場面はなかったので、銃器に関しては特に苦労はありませんでしたね。しかしやはり爆破の傍でのシーンは、大変でしたね。

コン・ヒョンジン——私も従軍経験がありますし、銃器の扱いに関してはそれ程プレッシャーを感じることはありませんでした。でも、演技をしている環境が爆発のすぐ隣だったりと一触即発の状態だったわけので、互いにそういった時に気を遣いあってはいましたね。

Q.この作品を通じて伝えたいメッセージは?

カン・ジェギュ監督——この作品を準備する過程のアンケートで、韓国の若い世代の人たちもやはり朝鮮戦争の実情についてよく知らないということを知り、また知人である早稲田大学の教授から日本の若い世代の人たちも、朝鮮戦争について熟知しているのは、極少数ということを知った。戦争とは、はどのような時代にも避けて通れないものであるにもかかわらず、日本においても韓国においても若い人たちが戦争をよく知らないでいる。その暴力性や惨状が忘れ去られようとしていることに対して、それをぜひ喚起して欲しいという思いを込めてこの映画を作ったのです。

チャン・ドンゴン——自分の出演作ではあるけれど、今回この作品に出て映画と言う媒体が持つ力にあらためて驚かされた。休戦以降韓国において朝鮮戦争という事件に、これほど注目させた政治家も思想家もこれまでいなかっただろう。この映画を通して、韓国の人々が朝鮮戦争というものにあらためて関心を持ってくれたことは大変な驚きであり、またそれは、これまでのハリウッドの戦争映画から感じてきたもの以上であったことも感じた。日本の若い人たちにも、是非この映画を観ていただいて、戦争が二度とこの地にあってはならないことを感じて欲しいと思う。

ウォンビン——私自身もこの作品に出演する前は、朝鮮戦争についてあまり知りませんでした。しかし、この作品を通じて間接的ではあるが朝鮮戦争を経験し、同族が殺しあうということがどれほど悲劇的なことかをあらためて知り、それが恐怖に満ち残酷なことだったと考えるようになりました。戦争は日本のみならず、この地球上のどの国に於いても二度とあってはならないことだと思います。そうしたことを感じて、また作中で描かれている家族の愛情と大切さを感じ取っていただければと思います。

コン・ヒョンジン——戦争とはこの地球上にあってはならないもので、もしまた戦争が起きたらそれ以上の不幸はないと思います。そしてこの作品の中には、そういった教訓も込められていますし、戦争がいかに悲惨かも描かれています。しかし、何よりも私が皆さんに感じ取って欲しいのは家族愛です。この映画を観て、皆さんが今一度家族に対して色々なことを考え、お互いをよく知り愛情を深めるきっかけになってくれればと思います。

 なお、『ブラザーフッド』は2004年6月26日より日比谷スカラ座他にて、全国ロードショー!
(宮田晴夫)

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