世界の若者たちが“ラヴアンドピース”を訴えていた1969年、目だってもてたい…というストレートな行動原理で学校をバリケード封鎖する高校生たちの姿を鮮烈に描いた青春グラフィティ『69 sixty nine』が完成した。

 本作は村上龍の自伝的なベストセラー小説を、宮藤官九郎が脚本化し、『青 chong』でPFFアワードを総なめし、続く『BORDER LINE』も高い評価を受けた新鋭李 相日(リ サンイル)監督がメジャー・デビュー作としてメガフォンを取ったもの。主人公のケンには、出演作公開ラッシュの続く妻夫木聡が、その親友アダマには安藤政信が扮し、その絶妙なコンビネーションと瑞々しくもパワフルな演技も話題をよんでいる。

 6月9日は、作品タイトルにあやかった“69の日”として、作品スタッフ・キャスト参加による完成会見やプレミア試写会等、様々なイベントが都内で開催され、1ヶ月後に迫ったロードショー公開に向けて、作品の魅力をアピールした。以下、帝国ホテルで開催された完成会見でのコメントを紹介しよう。

坂上順(東映常務取締役)——自分自身の69年を振り返ると、当時私は既に撮影所に入っていて、マキノ雅広監督や石井輝男監督のもとで下っ端として働いていた。そこでさんざん言われたのは「おもろうなければ、映画じゃない。おもろうなければ銭とれへんで」と言う事。その意味では、この映画は間違い無く面白い映画だと思う。興収目標は69億円(笑)。

伊知智啓(プロデューサー)——村上龍さんとは、『限りなく透明に近いブルー』を映画化した時からのつきあい。本作は、69年という独特の時代を背景にしているので、映画化するタイミングは難しいだろうが、そこで生きた若者たちをやることが必要な時代が来ると思っていた。そして今回、若いスタッフ・キャストにより、時代が要請する作品として完成したことを大変光栄に思っている。

李 相日(リ サンイル)(監督)——最初この話をいただいた時は、いきなりのメジャー企画で、ちょっとこの人たち頭がおかしいんじゃないだろうかと思ったんですが(笑)、これはチャンスだと思い切って飛び込んで見ました。1年くらい前に撮影をはじめたんですが、1年たってみるとこうしてこの場で完成を報告できて、嘘のような本当のような…、よかったなと思ってます。
 69年に生まれてないから…ということは、どのインタビューとかでも聞かれるんですが、僕も宮藤さんもやりたかったことは、今退屈でしょうがない、言いたいことを言ったり、やりたいことをやったら自己批判させられそうな世の中に対して、そうではない、間違っててもあっててもいいから、若者が声をあげるんだということを描ければ…であり、それができた映画になっていると思います。

妻夫木聡(ケン<矢崎剣介>役)——最初にこの台本をもらった時、僕ははじめて台本を読んで声をあげて笑ってしまい、こんな面白い話があるんだとびっくりしてしまいました。
 李監督の作品は観てましたので、この監督がこの作品をどう撮るのだろうと結構楽しみにしてたんですけど、実際にあってみたら一緒にやっていこうぜみたいな兄貴的な存在で、あまり監督と役者という境界線をひかない方だったのですごく楽しく出来ました。
 作品はケンとアダマの友情が基盤になっていますが、安藤さんとも最初に会った時から、この人とは合うなぁというのを直感で感じていて、撮影中・撮影後・プライベートと常に一緒に楽しくやれました。行動も考えも、本当に自由な方でいいなぁと。
 原作は読んでなかったんですが、本当にあったことだと知ってびっくりしたんですが、実際に村上さんにあって話を聞いたりところ、60年代って自分的には暗いイメージがあったんですが、すごく明るい。本当にこの人ケンなんだなぁって思えて。今の若者も、60年代の若い人たちも根本的な考え方、若さと言うパワーは変わらないのではないかと思いました。先のことなんて高校生は考えてないから、そのパワーを大事に今生きている意味というか、俺はここにいるという強さを出せればという思いで演ってました。
 映画の中でも「楽しんだもの勝ち」という僕の台詞があるんですけど、この映画自体もまさにそんな、楽しいところが満載になっています。是非観てください。

安藤政信(アダマ<山田正>役)——台本を読んだ時に、本当に面白くて絶対自分でやりたい!と思ったんですが、高校生役を28歳にして演るのはどうかなぁ…という点では少々悩みました。僕は李監督のことは全く知らなくて、終わった後に他の作品や『69』を観て、この人はすごい監督なんだなぁ…と思い、宝捜しで自分が宝を探し当てたようで、この作品に出て本当についてるって感じでした。

 撮影は、昨年の8月から原作の舞台である長崎県佐世保を中心に行われ、10月にクランク・アップ。その間長崎を見舞った酷暑と、過密なスケジュールで、肉体的にはかなりハードな現場だったと撮影を振り返る、李監督・妻夫木・安藤だが、その表情は過酷な戦いを連携して戦い抜いた充足感に満ち、完成作への期待を高めてくれた。

なお、『69 sixty nine』は2004年7月10日より全国東映系劇場にてロードショー!
(宮田晴夫)

□作品紹介
69 sixty nine
□公式頁
69 sixty nine