世界のダンス界からもBUTOHとして注目されている日本の暗黒舞踏。その創始者であり、演劇や映画、写真などさまざまな別のジャンルにも多くの影響を与えた土方巽。1973年に自らの舞踏を封印した彼の最後の公演『暗黒舞踏派』、京大西部講堂にて行われたこの伝説の舞踏の8ミリフィルムによる未公開映像が30年間たった今、デジタル革命によって新しくよみがえり、再構成によって完成したのがシアターイメージフォーラムにて公開中の『土方巽 夏の嵐 2003〜1973 燔犧大踏鑑』である。

 今回上映前に行われたトークイベントには写真家の細江英公が招かれ、会場は通路にすわる者や、立ち見多数のぎっちぎちの超満員。土方は寺山修司、三島由紀夫、横尾忠則ら多くの芸術家・作家たちとの交流を盛んに行っており、なかでも細江とは写真集『鎌鼬』での、今でいうコラボレートが有名だ。この写真集で細江は東北の田舎風景を舞台に土方を被写体にすえ、そこに現れる日本の原風景と霊気、そして狂気の幻想世界を創出した。

 イベントでは細江監督、土方主演による20分ほどの実験映画「へそと原爆」の上映も行われた。日本にまだ実験映画がほとんど存在しなかった当時、寺山や作曲家の武満徹、詩人の谷川俊太郎らによる芸術集団を結成しそれぞれで短編映画を製作した時のものだという。「みんながそれぞれ作ったなかで寺山さんの「猫学(キャットロジー)」とか谷川さんの『X』とか面白かったなぁ。一番面白くなかったのは、石原慎太郎の作ったやつだったんだよ。」などとちょっと意地悪な表情をうかべながら当時の様子を語ってくれた。真剣な表情で彼の話を聞いていた観客もこれにはニンマリ。

このイベントは来週4/17には『江戸川乱歩大全集 恐怖奇形人間』や『元禄女系図』など作品中に多く土方の舞踏を採り入れてきた石井輝男監督が登場します!また、好評につき公開期間延長も決定しているという。
(綿野)

☆『土方巽 夏の嵐 2003〜1973 燔犧大踏鑑』はシアターイメージフォーラムにて公開中!

□作品紹介
土方巽 夏の嵐 2003〜1973 燔犧大踏鑑