前作『8人の女たち』が世界的に大ヒットしたフランソワ・オゾン監督の新作は、南仏の高級リゾート地に滞在するイギリスの女流作家と、彼女と全く正反対の若くて奔放な美女との対比を描いたミステリー。主演は、以前『まぼろし』でオゾンと組みその演技が高く評価された大女優シャーロット・ランプリング、そしてもう一人のヒロインには『焼け石に水』『8人の女たち』でオゾン作品には三度目の起用となるフランスで最も注目される若手女優の一人であるリュディヴィーヌ・サニエ。

 ランプリング演じるイギリス女流作家を”見る女”としたら、サニエ演じる美女・ジュリーは”見られる女”として両者が互いに作用しあって新しい自分の表現を発見していく様子が描かれる。

 来日記者会見には、3度目の来日となるオゾン監督とサニエが登場した。シナリオ執筆段階から主演の二人を想定していたか、という質問にオゾンは「シャーロットともう一度仕事がしたかったのがはじめにあった。サニエの役どころは初めは若い男性として書いていた。でも中年女性と若い男性という対比ではステレオタイプのように思えてきて、それで設定を若い女性に変えたんだ。中年女性と彼女の鏡のようになる存在だと思ったし面白いと思ったんだよ。」と答えた。シャーロットとの共演についてサニエは、「場所も南仏だったし屋外での撮影が多くてしかも春だったのですごく開放的な雰囲気での撮影でした。『8人〜』とは違って登場人物も限られていたしスタッフも少数でやっていたのですごくチームもアットホームで内輪なムードでした。だからシャーロットともすごく親密になれたと思います。彼女は寛大で何でもとても一生懸命にやる女優です。」と語った。そのシャーロットが演じる主人公のイギリス女流作家。なぜそういう設定の主人公にしたのかという質問にオゾン監督は、「彼女を通して自分を表現しているんだけど、それは一種のユーモアだよ。自分と同じような立場の人間を描くよりも、全く違う境遇の人物の方がやりやすいかったし、シャーロットとの『まぼろし』で思ったんだけど、女性の登場人物の方が内面的なものを表現しやすいんだ。」と語った。

また、オゾン監督とサニエお互いについてどう思うかという質問には、「オゾンは監督の中で一番よく知っている人。これまでの作品で色んなよい体験をさせてもらったと思います。そして私のことを高く評価してくれている人です。いちばんすごいところは、現場での雰囲気をとてもリラックスさせてくれるところ。ユーモアセンスもすごくあるのよ。まぁ、これ以上言うのはもうやめておくわね。」とサニエ。対してオゾン監督は、「3作品で一緒だけどそれぞれの作品で私の演出も違うし、関係はその都度違っていると思う。女優としての彼女は、リスクを進んで負い、楽しんで演技をするすぐれた女優です。役作りもすごくうまい。フランス人には珍しいタイプ。」と評した。
(綿野かおり)

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