これまでに『シザーハンズ』『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』『エド・ウッド』など、無気味で異端なはみだし者たちを主役に世にも可愛らしくロマンティックな物語を一貫して生み出してきたティム・バートン監督が新作『ビッグ・フィッシュ』をたずさえ来日した。会見会場は、映画の中で最もロマンティックなシーンの一つである一万本の黄水仙畑をイメージして本物の黄水仙に囲まれての舞台が用意された。
この作品は、嘘みたいな話ばかりをして皆を魅了しつづけてきた父とその息子の関係を描いており、ストーリーの多くは臨終にある父親のその嘘かまことかわからぬ奇想天外な人生の回想である。父の懐述には、巨人と親友になった話、村に住む魔女に自分の未来を教えてもらった話、幻の町、美しい中国のシャム双生児、そして最高にロマンティックな妻とのラブストーリー・・・。そういった、夢のような出来事を滔々と語る父と、そんな父に対して息子は真実の話を要求する。そうして彼が了解した真実の父親の姿とは・・・?バートン監督は、この原作を映画化したのは、実際に自分が父の死に直面したことが大きく影響していると語っている。そして撮影の終わり頃、彼自身がヘレナ・ボナム=カーターとの間に一児を得て、父親にもなっていることからバートンにとって最もパーソナルな作品でもあり、まっすぐなテーマに正面から描いてみせた手腕からもバートンの監督としての成熟もうかがえる、最高の感動作に仕上がっている。

作品を造る時の発想はどこから来るのか?という質問に、「少年時代を郊外で過ごしていたから、退屈で、いつも頭の中で空想ばかりしていたよ。その結果こういう仕事ができてとてもいい環境に育ったと今では思っているよ。」と答えた。また、作品を選ぶポイントについても「基本的にプランはつくらない。その時情熱がわくものを選んでいるよ。僕の作品では、『シザーハンズ』の主人公のはさみ男、『エド・ウッド』の主人公、そして今回もみんな主人公の名前が”エドワード”なんだよ。それは僕がつけてるわけじゃなく、偶然なんだけどね。特にパーソナルな作品であるこの3本に共通するこの名前は、ぼくにとって運のいい名前だと思っているんだ。」と奇妙な偶然の一致を披露してくれた。

今作の主人公エドワードは、若い時と、人生を終えようとしている彼を、ユアン・マクレガーとアルバート・フィニーがそれぞれ演じている。それについてバートンは「一人の役を二人で演じてるんだから当然似ていなきゃおかしいんだろうけど。でも、ユアンはアルバートが『トム・ジョーンズの華麗な冒険』を演じた時の姿にそっくりだ!」と語った。

また、女優の桃井かおりさんが登場し、監督に花束を贈呈した。桃井さんは作品を「私は結婚もしてないし、親と今一緒に住んでいるから親の死を考えるだけですごくゾッとしちゃう。でもそれを辛いことじゃないと思わせてくれる作品でした。」と語った。桃井さんをバートン監督は「日本映画の60年代のエイリアン」と評し、桃井さんも「『ネクスト・サムライ』つくりましょうよ!」とノリノリで答えるシーンも。ちょっと押され気味?な感じのバートン監督でした。
(綿野かおり)

☆『ビッグ・フィッシュ』は5月スカラ座1ほか全国東宝洋画系にてロードショー!