デビュー作『酔っぱらった馬の時間』で、一躍注目を浴びることとなったイランのクルド人監督バフマン・ゴバディ監督が第二作目にあたる新作『わが故郷の歌』をもって来日した。
舞台は、イラン・イラク戦争(1980-88)が終わった後の、両国の国境地帯。クルド民族音楽に彩られたにぎやかな珍道中が、戦乱の続くイラクで悲劇の旅へと変わっていく鮮やかな演出に、ゴバディ監督の平和への願いがあふれている。前作とはうってかわって、厳しい現実を生きていながらも、生き生きと彼らの生活を営む人々をそこにみることができる。戦争の非道に対する告発であると同時に、心躍る民族音楽に彩られた生命の賛歌とよべる作品となっている。

 来日記者会見における、ゴバディ監督のこの言葉が特に印象的であった。
ゴバディ「私たちが直面している悲惨な現実を映画にするのではなく、そういうものが含まれていないコメディのような映画を私はとても撮りたいです。しかし、我々は、侵攻してくる人々、攻撃してくる人々がいなくならない限り、それは不可能なんです。ジェット機が飛ぶ音で起きている我々には、それはもはや日常です。私の映画からはそれは決してなくならない。撮影はすべてイラン・イラクの現地で行いましたが、私たちが一番恐れていたのは地雷でした。いつ誰が地雷を踏んでしまうともわからない状況での撮影でした。それは私たちにとっての現実なのです。私が、いつ幸せな映画を撮れる日がくるのかわかりません。」

☆2月21日(土)から岩波ホールにて、ロードショー!