アジアの新鋭・鬼才たちの作品群に加え、イスラム革命以前のイラン映画特集、清水宏生誕100年特集上映など、今回も作家性溢れる作品群が上映された第4回東京フィルメックスもいよいよクライマックス。クロージング上映を残すのみとなった11月30日の宵、有楽町朝日ホールでは授賞式が開催された。
 観客を含めた映画祭を巡る全ての人たちへのお礼と、第5回映画祭への抱負をこめた林加奈子ディレクターによる挨拶に続き、観客賞が市山尚三プログラム・ディレクターより発表された。この賞は、授賞式後に上映されるクロージング作品、イラン映画特集中の中・短編、森崎東ナイト上映作品を除く27作品を対象に、観客投票により最も高い平均点となった作品に与えられるもの。そうして選ばれた、一般観客から最も愛された受賞作は、清水宏監督特集上映として上映された『簪』が選ばれた。因みにこの作品は、会期中フィルム・センターで3回の上映が行われたが、いずれの回も満席となる人気ぶりであった。
 続いて、既報の東京フィルメックス・コンペティションの発表へ。審査員特別賞は、ハナ・マフマルバフ監督の『Joy of Madness(原題)』が輝いた。ハナ監督は新作準備のために既に帰国されたため、授賞式には本作を配給する東京テアトルの工藤氏が出席し、監督からのメッセージを紹介したので、以下その全文を紹介しよう。「私は今アフガニスタンにいます。現在キャスティングをしているところですが、その状況は『Joy of Madness(原題)』を撮った頃よりはよくなっています。今思うに、私たちは人生の中で一度はアフガニスタンに行く必要があると思います。それは、アフガニスタンを援助するためではなく、自分の人生に経験を重ねるためです。審査員の皆さん、フィルメックスの皆さん、本当にありがとうございました」(ハナ・マフマルバフ)
 そして最優秀作品賞「コダックVISIONアワード」は、ニン・ハオ監督の『香火』が受賞した。ラフなTシャツ姿で壇上に上がったハオ監督は、満面に感激の面持を浮かべ「今、非常に興奮してますし、感激しています。皆さん、ありがとうございました。そしてあらためて、この映画祭を運営されている全ての方、そして私がこの作品を撮るために助けてくださった全ての方々、そして故郷である山西省の人々に感謝をのべたいと思います」と受賞の喜びを語った。
 また講評として、今回の各賞が審査員それぞれの選定がほぼ一致しての結果であったこと、自由を感じさせる映画祭のムード、新旧作を同時に紹介する映画祭の姿勢への評価などが審査委員長をつとめた映画史家のベルナール・エイゼンシュッツ氏に語られ、なかでも清水宏特集上映及びその上映作品が観客賞に選ばれたことにはスペシャル・メンションがなされ、第5回大会への期待も新たに序章式は幕を閉じた。
(宮田晴夫)

□公式頁
第4回東京フィルメックス

□作品紹介
香火
Joy of Madness(原題)