“新・作家主義国際映画祭”として早くも4回を迎えた東京フィルメックス。映画史にとって重要でありながら、今日の日本ではあまり上映の機会のない作品、新たに再評価されるべき作家の作品にスポットを当てる特集上映企画の一つとして、今年生誕百周年を迎えた日本の誇るべき巨匠・清水宏監督の作品10作品が上映され、特に最近の映画ファンには新鮮な感動を与え好評を博している。
 この特集上映を記念して、現在活躍中の日本人映画監督が、清水宏監督の魅力に迫るトークショーが会期中ニ度にわたって開催された。その二度目にあたる11月27日は、最新作を完成させたばかりの二人、「誰も知らない」で子役演出に挑んだ是枝裕和監督と「犬と歩けば」で動物演出に挑戦した篠崎誠監督が自身の経験を織り交ぜながら、清水宏の子役に対する演出やロケーションなどの演出技法について熱く語った。
 清水宏は戦前・戦中の松竹を代表する監督として活躍し、戦後は独立プロを設立し、また新東宝や大映でも作品を発表するなど精力的な作品を作り続けその監督作品は163作品にのぼる。しかし、同い年で親友であった小津安二郎がやはり生誕100年ということで内外共に盛り上がりをみせているのに比べると、注目されずに忘れかけられている。その点に関して篠崎監督は、「163本の作品を撮っているが、それぞれが多様で一定のテーマに収まらないことをやってきたからではないか」とその一筋縄では行かない懐の深さと魅力を指摘する。そういう意味では、年代・ジャンルをシャッフルさせた組み合わせで作品を楽しむと、より広い魅力を味わえるのかも。また是枝監督は「素直に泣けて、年をとったのかな(笑)。映画っていいなと思いました」と、感動交じりに語った。
 なお、清水宏特集上映最終日(30日)は、11:00〜『歌女おぼえ書き』、14:00〜『恋も忘れて』、17:00〜『蜂の巣の子供たち』(是枝監督オススメ!)の3作品が、フィルムセンターで上映される。
(宮田晴夫)

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第4回東京フィルメックス