お人よしで夢見がちな女性・eiko[エイコ]。駅前を歩けばつい山のようにティッシュを受け取ってしまったり、言葉巧みなキャッチセールスから高額なくだらん品物をつい買ってしまったり…。勤めていた会社の社長は給料未払いのまま夜逃げをし、自分の部屋の前では町金の強面が手薬煉引いて待っている…。そんなブルーな状況が重なったある日、エイコは自分のことを「加代」と呼びかける、ちょっとボケた老人・江之本と出逢い、帰るところの無い彼女は、老人と共同生活を送ることになるのだが…
 『eiko[エイコ] 』は等身大の女性の日常と、彼女が出会うどこか憎めない人々との交流を、コミカルにかつポジティブに描いたハートウォーミングなヒロイン・ムービー。エイコには、常に存在感のある女性を演じてきた麻生久美子が、リアルでありながらもこれまでとは一味違ったキャラクターを軽快に演じて魅力的だ。
 本作の完成披露試写会が、11月21日銀座ガスホールにて開催され、監督・キャスト陣による舞台挨拶が行われた。
 本作を監督した加門幾生監督は、これまで多くの劇映画の助監督や、『いいひと』など多数の人気ドラマの演出でキャリアを積み、本作が劇場用監督デヴュー作となる。「観ていただければ充分判ってもらえる作品だと思います。麻生さんのいつもやってらっしゃる映画の感じとは、ちょっとだけ違う部分が出たんじゃないかなということと、沢田さんの相変わらずカッコ良さ、阿部さんもこれまた今回はちょっと違うぞという風になっていると思いますので、楽しんでください」と語った加門監督は、23歳の等身大の女性を描いた本作の次には、28歳のやはり等身大の4人の女性が人生の転換期を迎える話を構想中とか。本作を見れば、是非この新作も見たくなることは請け合いだぞ。
 エイコ役の麻生久美子は、意外?にも実生活ではやはり人の言うことはすぐに鵜呑みにしてしまうタイプ。キャッチセールスでも、つい話を聞いてしまい化粧品を買ってしまったこともあるとか(クーリングオフしたそうですが(笑))。加門監督は、彼女から実際にそんな話を聞いて、やはりエイコは麻生しかいないと思い、脚本も彼女をイメージして書き直したそうだ。「最近、人間関係とか、人を信じることがが凄く難しいなぁと思う年頃になってきてきたんですが、この映画のテーマは信じることだと思います。この映画を観て、やっぱり信じることは大切なことなんだなって皆さんに思っていただければ嬉しいと思います」と語った麻生にとって、今回のエイコ役はその気持ちがわかりとても演じやすかったそうだ。
 そんなエイコに絡む江之本役は、芸能生活35周年を迎えた沢田研二が演じている。今回の作品に参加した経緯を冗句を交えて話したのに続き、「はじめての方ばかりで、新鮮な気持ちでやらせてもらいとても楽しかったです。」とコメント。江之本は実はボケ老人ではなく、そのふりをしていた詐欺師まがいの占有屋。「ちょっと悪い奴というのは演るには面白い。若い娘を騙すのか、騙さないのか。なんとなく、淡い交流があるような、ないような。でも、きっと男と言うのはいくつになっても、若い娘からちょっとそれらしい素振りとか、優しい言葉をかけられたりには、ドキドキするんじゃないかなと思って…。それを楽しみながら演らせていただきました」と今回の演技について語った。
 江之本に依頼されエイコのことを調査する探偵・大野役は、阿部サダヲが真面目そうに演じている。確かに、くせのあるバイプレイヤーとしての印象が強いだけに、この役所は意外性があって新鮮だ。「今回の役の方が大本では実際の自分に近いです。その分普段よりも芝居をするのは、自分のプライベートを見せているようで恥ずかしかったかな」。
 なお、『eiko[エイコ] 』は2004年2月よりテアトル池袋他にて全国ロードショー!
(宮田晴夫)

□作品紹介
eiko[エイコ]