『メモリー・オブ・マーダー(殺人の追憶)』(原題)は、監督デビュー作『ほえる犬は噛まない』が第13回東京国際映画祭シネマプリズム部門で上映されたポン・ジュノ監督の最新作。韓国での公開時には同時期公開の『マトリックス リローデッド』をも凌駕して、今年上半期の興行収入第1位の大ヒットを記録。実際に迷宮入りとなった事件に想をとり、韓国の農村で起きた連続レイプ殺人事件を追う、地元出身のトゥマンとソウルから赴任してきたテユンという二人の刑事の捜査と挫折を、サスペンスフルに、またジュノ監督独特のユーモアのセンスを垣間見せつつ描いた骨太なドラマだ。
 映画祭最終日のオーチャードホールでの上映前には、トウマン刑事役のソン・ガンホ、テユン刑事役のキム・サンギョン、後半の物語の鍵を握る男を演じたパク・ヘイル、音楽を担当した岩代太郎、プロデューサーのキム・ムリョン、そしてポン・ジュノ監督が来場し、舞台挨拶が行われた。
 「真心をこめて作った作品。皆さんの記憶に長く残る作品であることを願います。」と挨拶したジュノ監督は大の日本贔屓でもあり、その想いを「私は日本のマンガを読み、素晴らしい日本の監督の映画を観て育ち、今も楽しんでいます。そしてこの渋谷では、今私のデビュー作『ほえる犬は噛まない』が上映中で、またこうして映画祭で2本目の作品がと2本の作品が同時に上映されていることに妙な気分を感じています。さらに、今年の夏にはPFFで私の短編も上映されたそうで、私の恥部が全て曝け出されたようで、不安になってます(笑)。そんな風に、私は日本映画に深い関心を持っており、また日本の皆さんが韓国映画に関心を持ってもらえれば嬉しいです」とコメント。
 また現在の韓国を代表する俳優と言っても過言ではないソン・ガンホは、本作を「『シュリ』『JSA』に負けない作品」と自身を持って紹介した後、「俳優として特別な意味を探すよりも、今回は作品の題材自体が韓国で実際に起きた事件を映画化しているということで、韓国の現代史における心の痛みを描くひじょうに重い作品故に、責任感を強く感じた」と作品を振り返った。
 また、満員の観客にも大好評だった本作は、「アジアの風」部門上映の新作から選出されるアジア映画賞を見事に受賞した。
 なお、『メモリー・オブ・マーダー(殺人の追憶)』は2004年春、ロードショー公開予定!
(宮田晴夫)

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東京国際映画祭